あいみょんを聴くと、何故だか銀杏BOYZを思い出す
先日近所のブックオフへと出かけ、店内で流れる有線放送に耳を澄ませていると、ある1曲に耳を奪われてしまった。シンガーソングライター・あいみょんの「君はロックを聴かない」という曲だ。
まるで90年代のJ-POPのように耳なじみの良い、どこか懐かしさも感じる優しいメロディ。ロックの感動やときめきを素直に綴った歌詞。素直に「ああ良い曲だな」と思わず聴きいってしまった。今ではヘビーローテーションしている位だ。
しかし、このあいみょんの曲。聴いていると、僕は何だか無性に銀杏BOYZを思い出してしまうのである。
・あいみょんを聴くと感じる謎の銀杏BOYZ感
「銀杏BOYZに似てる?全然違うだろ」「どういう耳と感性してんだ、全然違うだろ」という声が聞こえてきそうだ。どうか落ち着いて聞いて欲しい。あ、石を投げないでえ!
確かに、銀杏BOYZのように叫び散らしている訳でもなければ、ガリガリに歪んだディストーションギターが鳴り響いている訳でもない。そもそも、あいみょんは女性シンガーソングライターである。音楽性どころかまず性別も違う。
しかし何故だろうか。聴いていると、銀杏BOYZのスピリットをたまらなく感じてしまうのだ。銀杏BOYZの、いや峯田和伸の姿が脳裏に浮かんでくるのだ。このイメージは一体何なのだろうか。僕の感性がイカれているのだろうか。
そんなはずはないぜ!僕の感性はまだまだ現役だい!ということで、今回はあいみょんの音楽から香るこの銀杏BOYZ感を徹底検証してみた。そこから導き出された、驚愕の事実をお届けしていこうじゃないか。
・あいみょんとはいったい何者?
あいみょんとはいったい何者なのだろうか。気になっている方も多いことだろう。
あいみょんは、youtubeに自作の楽曲をアップしていたことから注目を集めてデビューした、兵庫県出身のシンガーソングライターだ。インディーズでのデビュー曲となった「貴方解剖純愛歌~死ね~」の、LINEの画面を用いたmvや過激で赤裸々な歌詞が話題になったのも記憶に新しい。
昨年リリースした件の「君はロックを聴かない」は、有線放送で流れまくるヒットを記録し、今や女子高生を中心とした若い世代では知らないものはいない存在である。
そんなあいみょんについて調べてみると、気になるのが検索ワードに「阿部真央」の名前が出てくることだ。何故に阿部真央?そんな疑問が浮かんだが、デビュー曲となった「貴方解剖純愛歌~死ね~」を聴いてみると、その理由が一発で分かった。
低めの声を張るようにして歌うその声や歌い方、怖いまでに赤裸々な歌詞に、ひしひしと阿部真央の音楽のエッセンスを感じるのだ。うーん確かに似ている。阿部真央のファンの方が、反応するのも分かる気がする。
そこで気になるのが、この赤裸々な歌詞の部分だ。考えてみればこの部分こそ、僕が銀杏BOYZを思い出す1番のポイントだったりするのだ。歌い方や声など、確かに阿部真央に似ている部分を感じられる。しかしこの剥き出しで過激で赤裸々な歌詞にこそ、僕は阿部真央というよりも銀杏BOYZのスピリットを、バイブスをたまらなく感じてしまうのだ。
・剥き出しの姿に感じる銀杏BOYZ・峯田のスピリット
例えば「貴方解剖純愛歌~死ね~」などは、
ねぇ どうしてそばに来てくれないの
死ね 私を好きじゃないのならば
作詞作曲:あいみょん 「貴方解剖純愛歌~死ね~」より歌詞引用
と、恋にのめり込んだ人間の危うさや頭のおかしさが、狂気とロマンチックの間を行ったりきたりする絶妙なバランス感覚で歌われている。何よりこの絶妙なバランス感覚にこそ、峯田和伸のバイブスを感じてしまうのだ。
銀杏BOYZの楽曲でいえば、「SKOOL KILL」や「あの娘に1ミリでもちょっかいかけたら殺す」「援助交際」などが当てはまるだろう。誰かに熱く恋焦がれるその時のロマンチックさと、愛するあまりに狂気を帯びてしまう恋愛にありがちな感覚を、絶妙に表現するバランス感覚があまりに上手いのである。両者に共通していえることだが、ロマンチックさと狂気。そのどちらかに振り切ったとしても、楽曲の魅力はここまで出なかったであろうと思うのだ。
また、話題の「君はロックを聴かない」にも同じことがいえる。男性の目線で普段ロックを聴かない相手に、
君はロックなんか聴かないと思うけれども
僕はこんな歌であんな歌で 恋を乗り越えてきた
作詞作曲:あいみょん 「君はロックを聴かない」より歌詞引用
と、恋の喜びやロックのときめきなどを伝えるラブソングになっているが、この素直すぎる程素直な歌詞や、恋にビビりながらもロックの無敵感で立ち向かうこのフィーリング。銀杏BOYZの「エンジェルベイビー」や「ナイトライダー」における、峯田和伸の世界観やイメージとぴったり合致するではないか。
また「あの娘はロックなんか聴かない」という、ややマイナスな要素があっても負けずに恋に向かっていくその様は、「君に好きな人や彼氏がいても構わない」と歌う銀杏BOYZの「夢で逢えたら」のようでもある。
僕があいみょんに惹かれた理由が、今ならはっきりと分かる。とにかく純粋で透き通っているのだ。
過激と取られても構わずに歌うような純粋さが、攻撃的なまでの透明感が、心に突き刺さってくる。一歩間違うと途端にダサく、狂気的な世界観になってしまうであろうギリギリの部分を縫って、ロマンチックにキラキラと歌う様が心にグッとくるのだ。
その音楽や言葉は、銀杏BOYZを初めて聴いて度肝を抜かれた高校時代の、あの匂いやフィーリングを思い出させてくれるのである。
・あいみょんを聴く若い音楽ファンにこそ銀杏BOYZをおすすめしたい
検索ワードの話に戻るが、検索欄に名前があることで、阿部真央のファンの方があいみょんを聴くということがあるだろう。逆にあいみょんを聴いている若いファンが、阿部真央の音楽を遡って聴く、ということもあるかと思う。
それも大いにアリ。好きなアーティストから、更に別なアーティストの音楽に触れていくことは、音楽を聴く上で無上の楽しみのひとつだ。その上で、どうだろう。あいみょんから阿部真央を聴き、更に銀杏BOYZの音楽を聴いてみるというのもおすすめだ。
過激なまでに研ぎ澄まされた、純粋で剥き出しな赤裸々に綴られた歌詞。そんな要素に惹かれた方にこそ、銀杏BOYZの音楽がおすすめしたい。「そんなの知らね」というあいみょん好きのそこのヤングアニマル達よ。今こそ銀杏BOYZも聴いてみようではないか。きっと何か感じるものがあるはずだ。そして僕と熱いロックトークを交わそうじゃないか。
確かに君は、あの娘はロックを聴かない。例えそうであっても少しも関係ないよね、何ていいながら。
本日のテーマソング
エレファントカシマシ「友達がいるのさ」を聴いて今僕が思うこと
先日、いつものようにウォークマンで音楽を聴いていると、エレファントカシマシの「友達がいるのさ」が流れてきた。うーむやはり名曲。僕はエレファントカシマシの曲の中でも、この「友達がいるのさ」が大好きなのだ。
孤独な男の、内面を省みるかのような歌詞の出だしに始まり、サビ部分では一転して、エレファントカシマシ節とも言うべき力強いシャウトで高らかに歌い上げるこの曲。きっとエレファントカシマシを知らない人でも、「いい曲だね」と言うであろう、文句なしの名曲だ。
そんな誰もが認める超絶名曲であるこの「友達がいるのさ」だが、耳元で流れるこの曲に身を任せながら、僕はプロ野球選手であるイチロー氏のことを思い出し、遠く彼方へと想いを馳せていた。
「何で唐突にイチロー?」「エレファントカシマシとイチロー、あんま関係なくない?」そんな声が聞こえてきそうだ。「こいつ、頭おかしいんじゃないの?」いや待ってくれ、そんな風に言わないでくれ。これにはれっきとした理由があるんだ、どうかブラウザバックしないでくれ。「理由って何だよ?パパッと説明せんかい!」いや、まあ今から説明するからどうか落ち着いて欲しい。
という訳で今回は、数年前に僕の身に起きたイチロー氏と「友達がいるのさ」にまつわる、因縁深いとある思い出についてのお話をお送りしようと思う。数年前の僕に何があったのか。「友達がいるのさ」にどんな関わりがあるのか。順を追って語っていこうじゃないか。
プロ野球選手のイチロー氏の活躍といえば、今更僕が説明せずとも皆さんも知るところだろう。デビュー以来、数々の試合のおいて記録を塗り替え、先日もシアトル・マリナーズへの復帰が報道されたばかりだ。正に生きる伝説。何を隠そう僕は、そんなイチロー選手の大ファンなのである。
野球の経験もなければ特に詳しい訳でもないが、イチロー選手のどこにそこまで心惹かれるのかと言えば、それはやはりその圧倒的なストイックさだ。
周囲が「天才!」と騒ぐ声にも惑わされず、冷静に「それだけの努力をしているので、自分のことを天才とは別に思わない」と言ってのけるそのクールな佇まい。過酷な練習にもストイックに打ち込み、徹底的な努力を重ねてそれに見合うだけの結果をしっかりと残す。最高にかっこいい。これぞ男の中の男ってもんだろう。
基本的に文科系ボンクラ男子代表の僕だが、意外と熱い体育会系な部分があるのだ。数々の名言や伝説やストイックさに触れている内に、野球にさして興味のない僕も、いつの間にかイチロー選手のファンになっていたのだ。
数年前に務めていた会社で、異動を経験した。それも中々に重要なポジションでの異動だ。イチロー選手よろしく、ここは心の底に眠った熱い体育会系マインドを発揮して仕事に打ち込んでいかねばなるめぇ。イチロー選手ばりのストイックさで仕事に打ち込み、「きゃー!かっこいい!抱いて!」とか若いちゃんねーに言われたりしてな。気合はもちろん、仕事の目標も高く設定する。無駄なお喋りなんて俺はしないぜ。求めるのはより高い目標と結果だけさ。ビバ!ストイック!そんな具合にメラメラと仕事に燃えていたのだ。
そして、そんなストイック精神はプライベートでも発揮された。当時の僕は「どうすれば彼女が出来るか」という命題を背負っていた。普段はだらしないひとりぐらし故に、たまには女の子との甘いおデートなども楽しみたいではないか。汚れた部屋もクリーンに保ち、髪の毛も美容室でオシャンティーにカット。服もおしゃれなものを購入し、ダイエットにも励んじゃう。極限までデキる男を演出しようと思った。
まあこうして挙げるだけでも、イチロー選手とは随分程遠い、ただの勘違いした意識高い系(笑)なクソ野郎なんですけどね。ちょっと黒歴史だからね。こんな奴俺嫌いだわーと自分に対して思いますね。
しかし、そんな生活を続けている内に、段々と体調が悪くなってきた。何故だか夜も眠れず、仕事でも普段はやらないような凡ミスを連発する。心なしかげっそりとして顔色も良くない。体温を測れば、高熱じゃないか。何だかモヤモヤとした霧が心を覆っているようで、元気もなくなってきた。
今となっては、そりゃそうだって話だ。基本的にずっと無理をしているのだから。きっと自己肯定感が低すぎることの、そしてプレッシャーからの反動だったのだろう。イチロー選手への憧れと理想の自分の姿を重ね合わせて、無理な努力を重ねていたのだ。結果が出ても「こんなんじゃ全然ダメだ!」と、常に自分を追い込みプレッシャーをかけ続ける。ストイックとは名ばかりに、自分で自分を徹底的にいじめていたのだ。
「友達がいるのさ」を始めて聴いたのが、ちょうどそんな時期であった。あまりに素晴らしい歌詞に歌にサウンドに、一発で心を持っていかれた。同曲が収録されている「風」というアルバムを、即座に注文したのを覚えている。
「とほほ。。」と肩をすぼめて歩く帰り道で。「俺ってほんとバカだなあ」という思いを抱えて揺られる電車の中で。勘違いして自爆した愚か者のクソバカの意識高い系(笑)である僕に、ボーカル・宮本浩次氏は優しく歌いかけるのである。
電車の窓にうつる俺の顔 幸せでも不幸でもなかった
くちびるから宇宙 流れてく日々に本当の俺を見つけてえんだ
自分のことを歌っているのかと思った。いつものように「頑張ろうぜ!」と激を飛ばす宮本浩次氏の姿は、ここにはない。しょんぼりと肩を落として歩く、ロックスターではないひとりの寂しい男の姿があるだけだ。 そしてサビに差し掛かった辺りで、男は声高に叫ぶのである。
俺はまた出かけよう あいつらがいるから
明日もまた出かけよう 友達がいるのさ 俺はまた出かけよう
作詞作曲:宮本浩次エレファントカシマシ「友達がいるのさ」より引用
そうだ。当たり前のことだが、体調を崩す程に無理をして、自分を作り替える必要はないのだ。確かに努力は大事だ。ストイックさも必要だし、結果も含めて高みに上っていかなくてはなるまい。しかし、それも自身のレベルで頑張れる範囲でのことだ。体調を崩しては元も子もない。僕がその時出来る「自身のレベル」を大いに超えていたのだ。イチロー選手が伝えたかった努力とは、そんなことではないだろう。
大事なのは、自身が今出来ることを精一杯やってものにしていくことだけだ。そんな繰り返しで、始めは無理だったものも次第に出来るようになっていくのだ。そういった意味では、頑張っていないダメな奴などこの世界にいないだろう。
そして俺にはそう、あいつらがいるじゃないか。彼女などいなくとも、寂しいひとりぐらしでも、駅までの道中に同僚と交わす「~さん可愛くね?」なんてくだらないやり取りが、タバコの煙を吐き出しながら友人たちと交わす「この間こんなことあってさ~」という何気ない会話が、ささやかだが僕を笑わせ、歩かせ、毎日の確かな活力になるのだ。
俺にはあいつらがいる。よく眠って起きたら、また出かけよう。その時には「こんなことがあってさ~」と、笑い話にしてしまおう。あいつらならきっと、笑ってくれるはずさ。
埼京線に揺られ名曲の歌詞を頭で繰り返しながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。電車の窓から見上げた夜空には、月が綺麗に輝いていた。
本日のテーマソング
特撮/ロコ!思うままに
俺的!聴くたびに泣けるおすすめの曲6選(後編)
ハローエブリバディ。今回は僕が聴くたびに思わず泣いてしまう、泣けるおすすめの名曲を紹介する「俺的!聴くたびに泣けるおすすめの曲6選」の後編をお届けします。
世の中にこういった「泣ける曲ランキング」は数多く存在するけれど、統計を取ったランキングという性質上、どれも似たような曲がランクインしがちだ。もちろん、多くの方の涙腺を刺激する素晴らしい名曲に間違いないのだけれど、これを個人でやったらまた違った曲が入ってくるんじゃないの?ランキングとはまた違った面白さが生まれるんじゃないの?という気持ちもあったりする。
そんな思いの中始めた、この「俺的!聴くたびに泣けるおすすめの曲6選」も今回で後編である。どんな曲が入るのか、もしかしたらあなたの心を震わせる名曲に新しく出会えるかもしれない。ラスト、気合を入れてお送りしていきます。
・毛皮のマリーズ 「ビューティフル」
後編最初のナンバーは、毛皮のマリーズの代表曲「ビューティフル」。当時、BEATLESやThe Rolling StonesやNew York Dollsなどに影響を受け、危険なムード全開の破壊的なライブを繰り返していた毛皮のマリーズが突如リリースした、どストレートでど真ん中の1曲である。
人生において悩み立ち止まったり、悲しみにくれてしまった時なんかにおすすめなのが、こちらの「ビューティフル」だ。そんなタイミングで聴いたならば、きっとボロボロと涙が零れ落ち、その後は、ひとりでも立ち上がる気力が不思議と満ちてくることだろう。僕にとっての青春時代のアンセムであり、泣ける曲でもあり、奮い立たせてくれる曲でもある。
そこで鳴り響くのは、これまでのような60年代や70年代のロックンロールのオマージュ的サウンドではなく、ボーカル・志磨遼平氏の複雑なパーソナリティや、これまでの人生をどストレートにさらけ出した、ど真ん中の破壊力を持ったメロディに歌詞の名曲である。
当時まだマリーズがインディーズだった頃、地元である山形で初めてライブを観たことがある。その時のMCで志磨氏が話していた「迷った時はとにかく、自分がかっこいいと思う方を選べ!きっと大丈夫だから!」の言葉と
ビューティフルに 生きて死ぬための 僕らの人生
作詞作曲:志磨遼平 毛皮のマリーズ「ビューティフル」より引用
高らかに宣言するかのように歌うこの「 ビューティフル」の歌詞は、あれから10年近く経った今でも僕の心を震わせ、奮い立たせてくれるのだ。
絶えず回り続ける人生において、時に悩んでも悲しみにくれてもいいじゃないか。失敗しても間違っても傷ついても、それはそれでいいではないか。一度きりの人生を最後まで自分自身として、そして愛する人と共に完遂できたら、それはきっとビューティフルな人生なのではないだろうか。初めてこの曲を聴いてから、何だかそういわれているような気がして、僕はいつも気が引き締まる思いがするのだ。
・和田光司 「Butter-Fly」
お次に紹介するのは、99年から2000年にかけて放送されたテレビアニメ「デジモンアドベンチャー」の主題歌、和田光司氏が歌う「Butter-Fly」だ。デジモン歌手としていわずと知れた、和田光司氏の「Butter-Fly」。現在20代のヤングアニマルたちにとっては思い出深い、誰もが知っているアンセムだろう。
たかが懐かしのアニソンと侮るなかれ。この曲が、本当にすごい。純粋な少年時代をデジモンと共に過ごし、現在は夢や希望を胸に現代社会をサバイブする全てのヤングアニマルたちに聴いて欲しい名曲だ。
なにが凄いって、曲がかっこいいのはもちろんなのだが、今聴くのとあの頃聴いたのとで聴こえ方が全く違うということだ。当時小2だった僕は、ただ「わ~かっこいい曲だなあ」と、太一やアグモンたちが戦うストーリーと共に夢中になって聴いていたものだ。しかしこの「Butter-Fly」、今聴くと様々な壁にぶち当たりながらも、果敢に日々を戦い続ける者たちの姿を描いた、応援歌のように聴こえるのだ。
無限大な夢のあとの 何もない世の中じゃ
そうさ愛しい想いも 負けそうになるけど
Stayしがちなイメージだらけの 頼りない翼でも
きっと飛べるさ
作詞作曲:千綿偉功 和田光司「Butter-Fly」より引用
この歌詞だけで、デジモン世代の方なら完全に歌うことができるだろう。「Butter-Fly」のサビの部分なのだが、これ、確実にデジモンワールドで戦う太一たち目線の歌じゃないよね。むしろそこから少し成長し、酸いも甘いも経験した若者たちの心情を歌っているように思える。
アニメを観て成長し、喜びも悲しみも経験して、デジタルワールドも太一やアグモンたちもフィクションで存在しないのだと知り、大人になった今だからこそだろう。この「Butter-Fly」の歌詞が当時とはまた違った感覚で胸に迫ってくるのである。もう泣けてきて仕方がないのだ。
日々現実の世界で戦い続ける僕らにも、少年の頃には心の中で思い描いていた、無限大な夢があった。どこまでもいける果てしない希望があったのだ。Jリーガーになりたいとか、ロックスターになりたいとか、途方もなく大きな夢って、みんなあったじゃない。時々思う。そんな無限大な夢って、いつ頃から見なくなってしまったのだろうか。
しかしだ。「そんなもん叶う訳ねぇ」と笑いながらも、もしかしたら現在でも果敢に挑戦している方もおられることだろう。また形を変えながら、確かな夢や希望に向かって仕事や勉強など、日々必死に努力している方も多いことだろう。かつて描いた無限大な夢は、消え去ったのではないのだ。僕らはみんなあの頃と変わらず、形を変えながらもそれぞれの夢や希望を持って生きている。
そんな日々の途中、変わりばえのしない毎日につまづいてしまった時や、無力感に苛まれて疲れ切ってしまった時。この「Butter-Fly」がおすすめだ。負けそうな心でもひび割れた心でも、僕らは蝶のようにまだ飛べるのだと、和田光司氏はあの頃と変わらずに僕らに優しく歌いかけるのだ。
デジモンワールドもアグモンも現実にはいない。僕らは選ばれし子どもたちではなかった。しかし僕らには今も夢や希望があるのだ。優しく背中を押され、懐かしい少年の日の風景や匂いを思い出しながら、「まだいける」「まだやれる」と立ち上がるその時、目からはほろほろと涙がこぼれてしまう。
夢や希望に向かって、毎日を必死に戦うデジモン世代の方々や、ふと疲れたなあと立ち止まってしまった方。そんな方々にぜひ改めて聴いて欲しい、おすすめの名曲だ。
・銀杏boyz 「東京」
最後に紹介したいおすすめが、銀杏BOYZのいわずと知れた名曲「東京」である。
ここ日本において、「東京」とタイトルのついた名曲は多くあるが、その中でも個人的に思い入れがあるのが銀杏BOYZの「東京」である。学生時代イケてない芸人として過ごし、自他ともに「モテないヤツ」として、ボンクラなる青春を過ごしてきた僕だけれど、そんな僕が失恋した際に聴く曲堂々1位として燦然と輝く曲が、この「東京」なのだ。
吉田拓郎氏よろしく、日本情緒溢れたフォーキーなサウンドに乗せて歌われる、失恋のその間際にボーカル・峯田和伸氏が見ていたであろう風景や心情。2人にしか分からないであろう思い出の数々を乗せた、飾らない言葉で歌われる歌詞が、我々男子の女々しい心にグイグイ沁み込んでくる。「モテないヤツ」として砕け散った数々の恋で、石ころのようになった心に響いてくる。どこまでも泣けるのである。
現実にある別れの瞬間のその時って、映画のように美しくはないもの。悲しき恋の結末に、砕け散った痛みに打ちのめされてしまうその時に、聴きたいおすすめの曲だ。
サウンドも曲も演奏も、全てにおいて素晴らしい曲なのだが、僕の心を惹きつけて止まないのがその歌詞である。
僕が歌うことは全部 君が僕に教えてくれたものさ
ふたりを通り過ぎたなんでもない毎日が
僕にとってはそれこそが歌になるのさ
このフレーズの、なんとも素晴らしいことか。「男の恋はフォルダ別保存」という言葉があるように、終わった恋を引きずりがちなやや女々しい部分もあるのが男心ってものだ。笑う女性陣もいることだろう。しかしこの歌詞。引きずりながらでも、思い出を胸に生きていく男心のどうあるべきか、ベストアンサーともいうべき一節じゃなかろうか。
僕のような若輩者が、恋愛がどうとか語るのに若干心苦しい部分もあるのだが、いわせてほしい。恋愛においてその傷は、男女両方非常に深いものだ。相手のことを思うあまり、恨む気持ちが芽生えたり憎く思うこともあるだろう。中にはその深い傷跡が、トラウマのようになってしまうことも多いだろう。
しかしそんな思い出や傷跡も、悲しみや嬉しさも、峯田氏の歌うように全てが歌になるのだ。そんな経験があったからこそ、できることがあるんじゃないだろうか。変わっていける部分や、優しくなれる部分があるんじゃないだろうか。
悲しい経験も嬉しい思い出も、自身を構成する要素になり得る。それはいつか、誰かを救うものになるかもしれない。自身の魅力になるのかもしれない。何故ならそう、全てが歌になるのだから。
相手を恨んだり憎んだり、悲しみにくれることよりも、そうした経験も含めて自分自身をワンアップさせ、前向きに歩いていく方が、ずっとずっと大事なのではないだろうか。「東京」を聴くたび、そんな優しい気持ちが僕の心にポン、と灯るのである。
泣いても引きずっても、いいのだ。そんな思いを胸に、また新しい自分自身として出発していければいいではないか。悲しい恋の結末で誰かを憎んだり、またはそんな思いに心を締め付けられるような方に、ぜひともおすすめしたい名曲だ。
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・まとめ
以上で、全2回に渡ってお送りした「俺的!聴くたびに泣けるおすすめの曲6選」を、終了します。個人的に聴くたびに泣ける、おすすめの曲を思いのままに書き綴る本記事だが、いかがだったでしょうか。文章量の影響で前編と後編に分けて更新いたしました。
ラブソングが意外と多めになってしまったのと、案の定ロック多めで趣味丸出しな記事になってしまった感があるが、それもまた面白いなあと思っている。あなたにとっての、大事なお気に入りの曲は見つかっただろうか。楽しんでくれたならこれ幸いである。
またなにか思いついたら、恒例にもなってきた感があるこの「俺的」シリーズを書いていきたいと思う。それではまたお会いしましょう。ばいちゃ!
本日のテーマソング
James Iha/Lover,Lover
俺的!聴くたびに泣けるおすすめの曲6選(前編)
ハローエブリバディ。いかがお過ごしだろうか。前回の記事で、「the pillowsのストレンジカメレオンがマジ泣ける」といった内容のブログを更新した。
そこで考えたんだが、今回はストレンジカメレオンに続いて、個人的に泣けるおすすめの曲を一方的にご紹介しようと思う。普段音楽を聴いて、あまり涙を流すことのない僕だけれど、それ故に思い入れたっぷりの珠玉の音楽を、ガチンコでご紹介出来るのではないか?と考えたのだ。
我々現代人は、常に色々な問題が起こり得る、実に複雑な世界で生きている。いかなる瞬間も元気元気で過ごせれば問題はないのだが、いかんせんそれが中々難しい。時にはいかんともしがたい現実に直面し、涙を流すこともあるだろう。
ん?大人だし情けなくて泣けないぜ?分かるよ、その気持ち。日本男児たるもの、大の大人たるもの、泣くなんてまるで負けたみたいに思ってしまうよね。しかし、たまにはひとりで涙を流してもいいんじゃないだろうか。音楽によって心を動かされて流す涙は、きっと素晴らしい、美しいものなのではないだろうか。少なくとも僕は、そう思う。
という訳で今回は、様々なシチュエーションごとに、聴くたびに泣けるおすすめの泣きの1曲を「俺的!聴くたびに泣けるおすすめの曲6選」と題して、前編と後編に分けてお送りしようと思います。本当は一気に更新するつもりだったんだが、文章量が多くなり過ぎて読みづらいので、2回に分けて更新します。
悲しい時のお供にするもあり、なるほどあの曲ね!と楽しむのもあり。もしかしたらあなたにとって、まだ見ぬぴったりな1曲が見つかるかもしれない。早速いってみましょう。
・THE SMASHING PUMPKINS 「Today」
始めの1曲目は、アメリカンオルタナティブロックの雄、THE SMASHING PUMPKINSの名曲「Today」。あまりに美しいメロディと、優しいイントロから徐々に激しさを増していくエモーショナルな展開に、僕が聴くたびに思わず泣いてしまう曲の1つだ。
Today is the greatest day
作詞作曲:ビリー・コーガン THE SMASHING PUMPKINS「Today」より引用
といった歌詞からも分かる通り、「今日は人生で一番素晴らしい日だ」と歌う、英語が苦手な僕でも理解できるハッピーで穏やかな雰囲気の歌い出しが何とも印象的である。しかしこの曲、一説によると、ボーカルのビリー・コーガンがセールスやスランプなどの様々な苦悩に悩まされ、自殺を考える程に鬱々としていた時期に書いた曲なのだそう。
そんなエピソードを知った上で聴くと、「Today is the greatest day~」が、ほのぼのとした雰囲気から一転して、バイきんぐの小峠氏よろしく「なんて日だ!」「なんてクソみてぇな日だよ!」とも言いたげな、悲痛な叫びのように聞こえてくるから不思議だ。改めてよく歌詞を見てみると、優しい曲調に反して内容はかなりヘビィで、隠れたギリギリの精神状態がうかがい知れる。
そんなヘビィな状態を歌った曲だからだろうか。泣きっ面に蜂な、プチ不運に連続して襲われて憔悴してしまった時や、なんだかふと「疲れたな。。」なんて思ってしまう晴天の日に、僕はTHE SMASHING PUMPKINSの「Today」を無性に聴きたくなってしまう。疲れ切って憔悴した心に、「なんてクソみてぇな日だよ!」とでもいうように歌うこの曲が、なんだかやけにシンクロしてしまう。「まるで俺のことを歌ってるみたいだ」なんてことを考えてしまうのだ。
ふと疲れたなあ、なんて思ってしまう晴れた日に、ぜひともおすすめの曲だ。
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・RADIOHEAD 「Creep」
時々思うのだが、本気で恋に落ちた時、「俺、絶対あいつ落とすわ!!」と自信に満ち溢れたテンションでガツガツいける男ってどのくらいいるんでしょうね。そして、それで本当にあの娘を物に出来る確立ってどのくらいだろうなんでしょうね。でもきっとそんな奴はほんの一握りで、大抵の男子は「大丈夫かなぁ、やらかしてねぇかなあ」と不安に思うものだと思う。
そんな恋の駆け引きにおいて、胸を襲う不安が限界値を超え、フラグもなにもかも消え去り、「俺はなんてダメな奴なんだろう」と膝を抱える夜にこそ聴きたい曲が、このRADIOHEADの「Creep」だ。
You're so fuckin'special
I wish I was special
上記にもあるように「君が特別なように、君にとっての僕も特別だったら良かったのになあ。。」と、寂しくつぶやく歌詞や、ギタリストのジョニー・グリーンウッドによる、サビ前からのなかばヤケクソ気味なギターが最高にエモーショナル。「理性じゃなくて感情のままに弾きました!」ともいいたげな、衝動的なプレイや優しい曲調が相まって、シュルシュルと縮んだ心に刺さりまくってしょうがないんである。
自身の情けなさやドラマや歌にもならないような恋の痛みで、思わず膝を抱えてしまう夜に聴いたならば、きっとホロホロと泣けてきてしまうだろう。ていうか俺は泣いた。恥かしいけどもう号泣しましたわ。ファルセットで衝動的に歌う、トム・ヨークのボーカルがまた最高なんだよな。
RADIOHEADの「Creep」、敗戦確実な恋の途中や終わりに聴きたい、おすすめのラブソングです。
Pablo Honey?[国内盤 / 解説・歌詞対訳付] (XLCDJP779)
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・LOSTAGE 「いいこと/離別」
恋愛、仕事、進学、夢。人生は、そういった様々な希望を追いかけることの連続だ。自身の希望を叶えるためには、きっと全ての勝負に打ち勝ち、ひとつひとつ手に入れていく他ないだろう。しかし追いかけるその道中で、なにかを失ったり離れていってしまうものもそりゃある訳で。
夢や理想などを追いかけ続ける旅の途中、失ってしまうものや離れていってしまうものを思い、足がすくみ恐れおののき、寂しさや悲しみに襲われた時にこそ聴きたいのが、LOSTAGEの「いいこと/離別」だ。
どこかセンチメンタルで疾走感のあるビートに乗せて、降りかかる煩悩やアレコレを全て振り切って駆け抜けていくようなサウンドや歌詞が、とにかく素晴らしい。僕が特に好きなのが、Cメロから後半のサビにかかる部分。
すり潰して 多分さ いい事があるぜ
吸い込んで 多分だけど いい事があるぜ
とCメロで優しく言い聞かせるように歌いながら、疾走感のあるラスサビに突入し、
クソ離れていく クソ別れていく
ビリーバー また夢をみてる
と高らかに宣言するように歌い出すのだが、この部分で何度泣いただろうか。もう今でも聴くたびに涙腺がヤバいです、はい。
大切な誰かとの別れや、失ってしまうことや距離が生まれてしまうことって、生きていれば当然直面してしまうことで。度々訪れる様々な離別に、時には悲しみの淵に追いやられることもままある。「どうしようかな」と悩むこともまあ、多い。そんな時LOSTAGEの「いいこと/離別」は、「いいことがあるぜ」「どんなになっても追いかけていこうぜ」と、毎度背中を押してくれるのである。
どうあがいても叶いそうにない夢や希望に、知らずと失い離されていく現実に、追いやられてぼろ雑巾のような心地がする夜更けにこそ聴きたい、おすすめの曲である。そうしてさめざめと涙を流しながらも、次の朝には「やってやんぜ!」と気合を入れ直すのである。そうやって今日も戦っていくのだ。俺たちは。
前編ということで、以上の3曲で本日は終了です。残りの3曲はまた次回、熱く紹介していこうと思います。あなたの好きな1曲も、もしかしたらランクインしているかも知れない。こうご期待!
本日のテーマソング
korn/Beg For Me
the pillows ストレンジカメレオンを聴いたし。マジ超泣いたし。
普段音楽を聴いて、あまり涙を流すことのない僕だけれども、聴くたびに思わず涙腺をグイグイと刺激されてしまう、という曲がいくつかある。ひとたび耳にすれば、心の柔らかい部分を、親指で強く押されるように目から涙がボトボトと零れ落ち、「あれ、俺、なんでこんな泣いてるんだろう。こんなはずじゃなかったんだけどな。。」なんて思ってしまうのだ。
そんな曲のひとつが、the pillowsの名曲・ストレンジカメレオン。非常に有名な曲ゆえに、知っている方も多いことだろう。
高校時代、周りのJKたちが、昼の校内放送で流れるJ-popを聴きながら「ゥチこの間ァ、彼氏とケンカしてェ、そん時この曲聴いてェ、マジ超泣いたしィ~」と盛り上がる中、僕は「マジで?ヤバくね?ゥチはthe pillowsのストレンジカメレオン聴いてェ、マジ超泣いたしィ~」と心の中で相槌をよく打ったものだ。懐かしい。
10代の頃からストレンジカメレオンを聴くたび、僕はもうパブロフの犬かのように泣いてしまうのだ。つい先日もそうだった。たまたまイヤホンから流れたストレンジカメレオンに、不覚にも涙腺を持っていかれてしまった。
我々のような、オルタナティブなひねくれ野郎たちにとって、こんなに優しい歌はそうそうないだろう、と思う。どんな条件下でも、無条件で心に響いてしまうのだ。もう、心が弱っている時に聴いたならば、大変なことになってしまう。
ストレンジカメレオンは、the pillowsの1997年リリースのアルバム「Please Mr.Lostman」に収録されている1曲で、ボーカル・山中さわお氏が当時抱えていた孤独感や疎外感などの苦悩が、色濃く反映されているのがとにかく印象的だ。
我々が生きる現代の生活は、蹴落とし蹴落とされのマウント合戦の連続で、熾烈を極めるものだ。様々な選択肢の中から常に正解を選び取り、勝負に勝ち続けなければサバイブできない。なかなかに残酷なことも起こるのが現実だ。相手に弱みを見せることなど、もっての他だ。
しかし、だ。時には、高く立ちはだかるそんな壁に圧倒されて、潰されてしまうこともある。勝負に負けてしまうことも、まあ、ある。
その過程で「やってらんねぇぜ!」と投げ出すことも、「俺は何てダメなやつなんだ!」と非力な自分を、ブチ殺したいくらい嫌いになることもあるだろう。そりゃそうだ、て話だ。何故なら俺たちは完璧超人ではない、人間だもの。
心にそうした悲しみが、孤独感が、疎外感が顔を出しうなだれるその時、耳元で流れるストレンジカメレオンはやけに胸に突き刺さり、目の前の景色をかっさらっていく。何故だかポロポロと目から雫が次々と零れ落ちてくる。
それはきっと、ストレンジカメレオンを聴いているその時、我々もまた、歌詞にあるストレンジなカメレオンになっているからだろう。
そんな我々に対して、周りに順応できない自分を「出来損ないのカメレオン」だと、変われない自分は「滅びるしかない」のだと皮肉りながらも、「それでも僕は君のために優しい歌が歌いたい」と、山中さわお氏は歌う。*1
そこに「こうしたらいいよ!」という明確な答えもなければ、押し付けもない。あるのはただ、スランプやセールスなどの様々な葛藤を抱えながら、自身をストレンジカメレオンだと皮肉ってみせる、さわお氏の優しい歌だけだ。
それは、まるで長年の付き合いのある気の置けない友人が、優しさとけだるげな安心感を持って、耳元でそっと寄り添ってくれているかのような心地だ。心が悲鳴をあげた時、「こうしたらいいんじゃない?」とあれこれ指図することもなく、ただ寄り添っていてくれること程、嬉しくて泣きそうになることはない。
いつか僕が、寂しきストレンジカメレオンと化した時は、きっとこの曲を聴くことだろう。そしてまた高校時代のように、心の中でそっと、「マジ超泣いたし」とポツリつぶやくのだ。
- アーティスト: the pillows,山中さわお
- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 1997/01/22
- メディア: CD
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本日のテーマソング
ガールズロックバンドFINLANDSが今、最高にかっこいい
かつてロックの衝撃にやられた全ての者たちには、皆等しく、ひとつの運命が待ち受けているように常々思う。一度ロックのリズムに、メロディに心を奪われたら最後。次の新たな衝撃に出会うための、砂漠の如く広い、音楽の世界をさまよう旅が始まるのだ。
その旅が、もう滅茶苦茶楽しい。好きなバンドのルーツを探ったりなどは、音楽ファンにとってあるあるな楽しみ方だろう。ルーツを探りながら、まだ見ぬ素敵な音楽に出会えた時などは、もう無上の喜びのひとつだ。
しかしそんな楽しい旅の途中、ふと「最近のバンドはさぁ~…」と愚痴をこぼしたりしてしまうことってないだろうか。
年齢を重ねるごとに、我々の感性も変化していく。かつてはCDショップなどで発掘しては、延々と聴いていた若いロックバンドの曲などが、何故だか楽しめなくなってしまう、ということが往々にしてある。そんな時にふと、上にあるように「最近のバンドはさぁ~…」と感じてしまうこと、ありませんか?
しかし若いロックバンドでも、本当にかっこいいバンドは沢山あるんじゃなかろうか。「ロックバンドの元気がない」などといわれがちな昨今でも、かっこいいロックバンドは生まれて、今日もどこかでライブを繰り広げているのではないだろうか。そんな風に考えていたところ、とあるバンドに出会った。
そのバンドがFINLANDS。僕は今、FINLANDSが最高にかっこいいと思います。「何だか退屈だなぁ」と感じているあなたに、ぜひともおすすめしたいバンドだ。
・ソリッドさとクールさが病みつきになるガールズロックバンド
FINLANDSは、ボーカルとギターの塩入冬湖氏とベースのコシミズカヨ氏の2人からなる、2人組ガールズロックバンド。
ライブやアー写における、厚手のモッズコートを着用したメンバーのビジュアルもさることながら、その楽曲たちもどことなく冬の寒さを連想させるものばかり。FINLANDS(読み方は、フィンランズ)の名の通り、凍りつく冬のフィンランドのように尖りながらもクールな世界観がもうめちゃんこ魅力的なのだ。
こちらの「ウィークエンド」を聴いてみて欲しい。とにかくキラーチューン感満載の名曲だ。歯切れの良いシングルコイルのギターから繰り出される、縦横無尽に曲中を駆け巡るリズミカルなリードギター。そして、マイナーコードを中心にした、切なさや虚無感や寂しさなどの、センチメンタルな心象風景を連想させる、疾走感のある曲。
奇をてらったアイディアや、ガールズバンド特有の女子女子した雰囲気にも頼らずに、感情のままに歌い掻き鳴らす正統派ど真ん中なギターロックに、センチメンタルさを通り越して、ゴリゴリにゲインを上げた心のオーバードライブが一気にONになってしまう。FINLANDSのようなバンドって、これまでいたようでいなかった気がする。これ、もう滅茶苦茶かっこよくないですか。
・冷たさと熱さが同居した塩入冬湖のボーカル
楽曲の良さもさることながら、最大の魅力は何といっても、塩入冬湖氏の特徴的なボーカルじゃないかと思う。まるで歌手のchara氏やYUKI氏が感情を最大にブーストさせたような、喉元をキュッと締めて歌う高音部分が印象的だ。
楽曲にもある、一抹のセンチメンタルさや切なさといった冷たさを持ちながらも、心の奥底から湧き上がる熱い衝動をも感じさせるボーカルに、心を惹きつけられてしまう。そりゃ、こちらの感情のオーバードライブも、ガッと入ってしまうってもんだ。
また、そうした圧倒的な声で歌われる、どこか詩的で時折ハッとさせられるようなパンチの効いた歌詞も素晴らしい。
クレーター クレーター お前の跡なら何千万もついてやろう
クレーター クレーター 跡形消すまで破撃光線じゃ意味がない
(FINLANDS「クレーター」より歌詞引用 作詞作曲:塩入冬湖)
男女の恋愛における関係の歪さを歌った歌詞だと思うんだが、そこに付随するアレコレを、「クレーター」のワードで表すこの表現力よ。
抽象的な歌詞の中でも光る、こうした言葉遊びの巧みさが、さらっと聴いていても耳に飛び込んでこびりついてしまう。そしてラスサビの衝動的なシャウトである。ハッと胸を打つこうしたフレーズや、曲の持つ、かっこ良くなる絶妙なポイントを的確に突いたボーカリゼーションに、聴けばたちまち引き込まれてしまう。一度聴いたら忘れられないこうした中毒性の高さも、FINLANDSの魅力のひとつだろう。
・いつかの「かっこいい!」にまた出会えるバンド、FINLANDS
「最近のバンドはさぁ~…」などと時折口にしながらも、僕らが音楽を巡る旅が止められないのはきっと、かつてロックに魅せられたあの衝撃がずっと忘れられないから。そう、僕ら音楽ファンは、そんなあの時の「かっこいい!」に何度でも出会いたいのだ。そんな「かっこいい!」にまた出会いたいから、旅を続けているんじゃないか。いわば長い旅路を歩く、永遠のビューティフルドリーマーなのだ、俺たちは。
そんな俺たちが捜し歩く「かっこいい!」が、FINLANDSの音楽にはある。そんな風に思う今日この頃。未聴の方、聴いてみて下さい。きっとあなたの心のオーバードライブも、ゲインマックスでONになることでしょう。おすすめです。
本日のテーマソング
エレファントカシマシ/幸せよ、この指にとまれ
The Birthdayの元ギタリスト・イマイアキノブは本当に下手なのか?
The Birthdayの音楽が好きだ。最近の活動こそあまり追えていないけれど、イマイアキノブ氏がギタリストとして在籍していた頃などは、よく聴いたものだ。低めに構えたフェンダー・ジャガーから繰り出される、ローファイかつブルージーな、大人の色気の漂うギターサウンドに夢中になって聴いていた。
しかし、イマイ氏が脱退し、フジイケンジ氏が加入した辺りで知ったのだが、どうやらイマイアキノブ氏のギターには批判も多かった模様。ネットで見てみると、「下手」だの「フレーズがクソ」だの「全然ダメ」だのと、散々ないわれようじゃないか。
もうね、ビックリしてしまった。「何でや、かっこいいじゃんかよ!」と遺憾の念を覚えた。自慢じゃないが、憧れてフェンダー・ジャガー購入したんだからな、俺。大学時代などは、そのかっこよさにしびれて、コピーバンドを結成してブイブイいわせてたんだからな。
何かと批判も多かったイマイアキノブ氏だが、そんな意見に対して、NO!を突きつけたい。という訳で、今回はいちファンの視点で、イマイアキノブ氏のギタープレイの素晴らしさついて語っていこうと思う。
・しっとりと楽曲に寄り添ったギタープレイ
イマイアキノブ氏のギターの特徴といえばまず、しっとりと、そしてしっかりと楽曲に寄り添ったプレイが挙げられるだろう。
The Birthdayでは、ミッシェル・ガン・エレファント時代とは打って変わって、ボーカルのチバ氏が、リフやコード進行をガシガシと弾いて曲をリードしている。その中で、曲の隙間を縫うようにフェンダー・ジャガーの枯れたトーンで放たれる、フレーズやアルペジオ、リフがもう滅茶苦茶かっこいいのだ。
アルバム「NIGHT ON FOOL」収録の「グロリア」では、基本的には淡々とバックで演奏を支えながら、合間では揺らぎのあるペンタトニックのリフを、間奏では突如として感情を爆発させたかのような、エモーショナルなフレーズをブチ込んでくる。アルバム「STAR BLOWS」収録の名曲「ピアノ」では、イマイアキノブ氏の弾くリバーブのかかった、まるで降り積もる雪のようなリフレインが、心のセンチメントな部分にそっと沁み込んでいくような心地がする。
またフレーズやリフばかりではなく、ギターソロも非常に魅力的なものばかりだ。特に「涙がこぼれそう」のソロが僕は好き。思わず走り出したかのように入るチョーキングはもちろん、尖りきった感情を表現したように挟まれる、後半のダブルチョーキングにスライド。正に涙がこぼれそうな、最高の泣きのソロだと思う。
こうしたイマイ氏のギターは、どれも音数が少なく、コピーしようと思えばパッと弾けてしまうプレイばかりではある。しかし、どれも楽曲の世界観を構築している、大事な音ばかりだ。あのフレーズなくしてこの曲はないともいうべきだろう。仮にこれが全く違うフレーズだとしたら、きっと曲の印象はガラリと違ってしまう。
・イマイアキノブは本当に下手なのか
批判を受けるのは、もしかしたらその音数の少なさからかもしれない、と思う。確かに、弾けたら一目置かれるような、テクニカルなタイプのギタリストではないだろう。フレーズをコピーすること自体は簡単だ。しかし、音自体をコピーしたとしても、あのニュアンスまでを出せる人はどれ位いるのだろうか。
フレーズだけではなく、ジャガー特有の独特なピッキングニュアンスやタイミング、音のトーンや上がり具合といった細かいプレイのひとつひとつで、胸に浮かんでは消える様々な感情の揺らぎを表現する、素晴らしいギタリストだと思う。本当に下手な人が、少ない音数で細やかな感情の機微をギターで表現しようとしても、到底不可能だろう。
ギターを弾く上で一番難しいのが、この細かいニュアンスを出す、という部分だ。ちなみに僕は無理。フレーズ自体は弾けても、少ない音数で細かい感情の機微を表現したような、あのドラマチックなフィーリングは中々出せない。
The Birthdayでは、チバ氏がガンガンギターを弾いているし、イマイ氏自身、ギターを弾きまくって曲をリードしていくようなタイプのギタリストではない。ミッシェル・ガン・エレファントのアベフトシ氏と比べたら、真逆のタイプともいえるだろう。
しかし、大人の色気香る、ブルージーなロックンロールを鳴らすThe Birthdayでは、時にバックに徹したり時に前に出て弾き倒したりと、チバ氏とのギターの掛け合いも魅力のひとつだ。しっとりと楽曲に寄り添った、The Birthdayでのイマイ氏のプレイを久々に聴きながら、そう懐かしく思った。
本日のテーマソング
ROSSO/ブランコ