黴ブログ

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歴史の裏に隠れた珠玉の名曲たち syrup16g『delaidback』を聴いた

先日更新した記事でsyrup16gに対するアツい想いを綴ったばかりだが、遂に待望のニューアルバム・delaidbackが発売された。風邪にヤラれて寝込んでいた為に更新が遅れてしまったぜ。悔しいんだぜ。常にこめかみを襲う頭痛が気になるけれど、気を取り直して今回もアツくレビューしていきたいと思う。(先日の記事は下記リンクをクリック!)

 

kawabeko1991.hatenablog.com

 

デビュー以来続く長いsyrup16gの歴史の中で、音源化されていない楽曲を新録で収録したこちらのdelaidback。一聴して思ったが、ただの過去曲の寄せ集め、と侮るなかれ。1枚のアルバムとして、なんと完成度の高い作品だろうか。このアルバム、控えめにいって僕らがあの頃魅せられた、syrup16gの魅力がふんだんに詰まったとんでもない名盤だと思う。

 

delaidback

delaidback

 

 
今回個人的に驚いたのは、2008年のsyrup16gの解散後に始動した、犬が吠えるのライブにて演奏された収録曲、01.光のようなと07.赤いカラスの2曲。五十嵐氏の生還ライブで赤いカラスを聴いた際にも思ったのだけれど、この2曲、すんげぇ。五十嵐隆氏のキャリアの中でも上位に軽く食い込むくらいの名曲じゃないだろうか。

syrup16g解散後の虚無感と寂しさと、それでいて生を渇望するような力強さと優しさに溢れた楽曲で、美しいメロディがそっと胸に沁みる。所々叫び歌う五十嵐氏の生々しいボーカルも相まって、楽曲に込められた凄まじいまでの感情を感じてならないのである。そしてそれに加えて、

 

中央線が止まっても 最終に乗り遅れても この生活は終わらない

退屈を感じれるひとも つまらないと投げ出すことも 

とても羨ましく思えるよ

syrup16g『光のような』より引用 作詞作曲五十嵐隆

 

と、syrup16gの音楽の根底にある「果てしなく続く生活」といったテーマを抽出して、最大出力でぶっ放している光のようなの歌詞。美しいメロディにsyrup16gらしいコード感満載のソリッドな演奏に加えて、この無常感漂う歌詞である。完璧じゃなかろうか。ライブでの新たなアンセムになりそうな予感が既にプンプンじゃないか。これまでライブでのみしか聴くことが出来なかった、これらの楽曲が音源で聴けるのが僕は嬉しくてならない。

 

また古今東西、良いアルバムというものはそのアーティストの持つカラーが様々な形で魅力的に収録されているもの。こうした名曲の新録も勿論なのだが、本作delaidbackには、そんな色とりどりのクレヨンを敷き詰めたような趣がある。様々なsyrup16gの側面が垣間見えるバラエティ豊かな楽曲群が揃っていると思うのだ。


甘美なメロディに乗せてダウナーな無力感に落ちていくような02.透明な日や03.star slaveに、ポップで爽やかな曲調ながらも「何もいいことがねぇ」と五十嵐節が炸裂する11.4月のシャイボーイや08.upside down。また不協和音的な怪しげなメロディが光る05.ヒーローショーや09.ラズベリー。そしてラストの遠い希望に手を伸ばすような、光に満ちた空気感の13.光なき窓まで、どこをとっても多彩なsyrup16gの魅力に溢れた内容になっている。


未発表の楽曲の中にも、これ程までに素晴らしい名曲たちが数多くあったとは。五十嵐隆氏の才能には驚かされてばかりである。長く続く彼らの歴史の、その裏に隠れた珠玉の名曲たちが集まった、珠玉の裏ベスト盤とも言える1枚ではないだろうか。

時に落ち込み虚無感や無力感に襲われながらも、どうにか抗い生きている。五十嵐氏が歌うように、中央線が止まっても最終に乗り遅れても、この生活は終わらない。そんな、果てしない生活を送る我々のそばにふらっといてくれるような、何だかしんどい時にふと聴きたくなるような、そんな素晴らしいアルバムだと思う。

 

これまで熱心にsyrup16gの音楽を聴いてきた人は勿論、「全く知らねぇよ!」という人にもオススメしたいアルバムである。むしろ聴いたことないという人、入門編にdelaidbackから聴いても良いかもしれない。めちゃんこ良いアルバムです。是非。

 

本日のテーマソング

syrup16g/赤いカラス