黴ブログ

好きなものやことを、徒然なるまま書き散らす。

熊倉献 『春と盆暗』を読んだ 空想好きの全てのボンクラ男子たちに 

最近は読書欲がやけに高まり、小説にエッセイや漫画など、ジャンルに関わらずに書籍をむさぼり読んでばかりいる。そんな中、春と盆暗という1冊の漫画を読んだ。空想と現実を行ったり来たりする、何とも不思議な世界観が実に魅力的な1冊であった。空想好きの、そしてまるでエイリアンの如き不思議女子が好きな、全てのボンクラ男子にこそ読んで欲しい漫画だ。

 

春と盆暗 (アフタヌーンKC)

春と盆暗 (アフタヌーンKC)

 

 

突然ですが、皆さん空想ってしますか?僕はというと、実はめちゃくちゃする。小学生時代などは、「白い部分踏み外したら、落ちて死ぬ!」などと言いながら道路の横断歩道の白い部分のみを踏んで渡る、なんてことばかりしていた。「地面にはサメがうようよいるから、地面につかないようにして帰ろう!」とか言うパターンもあったっけ。そんな時、僕の目に映る景色は本当に、断崖絶壁やサメだらけに見えたものだ。イマジネーションが豊か過ぎる程豊かな、浦安鉄筋家族ばりのリアルバカ小学生だったな、と思う。

 

頻度こそ当時より減ったものの、そんな空想を現在でも頭に浮かべることがある。例えば片頭痛に襲われるたびに、医薬品のCMに登場するような、痛み成分を模したキャラクターが脳内で暴れまわる映像が浮かぶし、部屋でギターを弾けば基本ロックスターになったつもりで弾いている。勿論目の前にはファンの山だ。「もしアイドルやアニメキャラが同じ職場だったら?」なんてお題が出されようものなら、友人たちと殴り合い寸前の白熱したテンションで延々と語り合える。最近も女優の吉岡里帆さんともしバイト先が一緒だったらどんな風に仲を深めていくか、という議題で熱く議論したばかりだ。もう何かそんな自分が気持ち悪い、いい加減現実的になれよ!と言いたい、何てイマジネーション空想野郎だ、俺は。

 

そんな空想好きのボンクラ男子代表の如き僕にとって、この春と盆暗は実にぴったりな1冊であった。1話完結の読み切り形式で描かれるのは、ボンクラ男子とまるでエイリアンのような不思議女子とのボーイミーツガールなストーリーだ。モヤモヤするたびに月に道路標識をブン投げる空想をする女子や、息苦しくなるたび水中に沈んだ自分を空想をしてしまう女子など、登場する女性は皆一癖も二癖もあるキャラクターばかり。そんな女子の「頭の中や心を掴む為にはどうしたら良いのか?」と、ぼんやりしながらも奔走するボンクラ男子たちがまた愛おしい。

 

所謂ラブコメのような分かりやすいドキドキ展開やエロはなく、独特の空想世界と現実世界を行ったり来たりを繰り返しながら、物語はあくまでも淡々と進行する。だが、それが良い。エイリアンの如き不思議女子とボンクラ男子の恋模様に、煌びやかなラブコメ描写などむしろ不要だろう。彼女たちの内面は分かりそうでちょっと分からなくて、手が届きそうで届かなかったり、時に届いたりする。どう転がるか全く予想は出来ない。何せ君はエイリアンで僕はボンクラ。君は一体何を考えているんだろう。描かれるのは一貫した、そんな僕と君との何気なくも時にほっこりとするような心象風景。そして作品内のボンクラ男子たちは、そんなちょっと変わった不思議女子に惹かれて奔走するのだ。

 

ドキドキ展開やエロはなくとも、ポップでキュートでどこか毒もある。それでいてほんのりと爽やかな読後感。頭にではなく絶妙に感覚に訴えかける作品世界は、どこか文学の香りさえ漂っている気がしてならない。

 

「何か面白い漫画ないかなー」という方や、昨今のラブコメに食傷気味の方に空想好きの方。そして何より、ちょっと変わった不思議女子に何故か惹かれてしまう僕を含む全てのボンクラ男子に、おすすめの作品である。ぜひ。

 

本日のテーマソング

スピッツ/惑星のかけら