黴ブログ

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Climb The Mind 「チャンネル3」を聴いた 毎日はデスマッチの連続だからこそ響く歌を

ここ最近は、Climb The Mindのチャンネル3というアルバムを繰り返し聴いている。LOSTAGEの五味岳久氏が、ブログで紹介していたことがきっかけで聴いた1枚なのだが、一聴してぶっ飛んでしまった。あまりの素晴らしさに、早くも「2018年俺的よく聴いた音楽」にノミネートしそうな勢いだ。

 

シトシトと濡らす雨粒のように、心の隙間にそっと入り込むギターのアルペジオや、その間を縫ってメロディを奏でるベース。どっしりと演奏の基盤を支えるドラム。そしてそこに乗る、淡々としながらもやけに美しく響く歌のメロディ。

 

20代も中盤を過ぎ、時折ガサガサと音をたてひび割れていく心を濡らすように、スッと沁みていく心地がした。

 

チャンネル3

チャンネル3

 

 

・悲しきかな、変わりゆく若き感性

 

年齢を重ねるたびに肉体は勿論、感性も変わっていく。そりゃそうだって話だ。繰り返す毎日の中で、経験は日に日に増えていく。そうやって得た経験や知識は、自身の哲学や思想にも影響を及ぼし見識が広がる一方、見聞きするもの全てに感動していたやわらかでフニフニだった感性も次第に変化していく。

 

何が言いたいかというと、皆さんにも思うところがあるだろう。10代の頃貪るように読んだような、少年漫画や若者に人気の新鋭ロックバンドの音楽なんかが、楽しんで聴けなくなっていくのだ。僕なんぞはひっそりとチェックしては「顔で注目されてるだけじゃないの。全然ドキドキしねぇわ。」とか心の中で悪態をついてばかりだもの。加齢って悲しいね。完全に「最近の若いもんは~」と飲み屋でクダをまくジジイと同化しているからね。そういうのよくないね。どうしてこうなった。

 

しかしだ。何も悪いことばかりではないな、とも思う。見識が広がり感性が変化していくことによって、Climb The Mindのようなバンドに出会って感動できるのだから。きっと10代ではまた違って聴こえたと思う。それが今、こんなに感動できるのだ。感性の変化も、悪いことではない。むしろ最高じゃないか。

 

・渇いた心にこそ、美しい音楽を

 

Climb The Mindは1999年名古屋にて結成されたエモ/ポストロックバンド。3ピースの、ローファイな音の隙間を活かしたような演奏が魅力的だ。音数が少ない分、真っ白な隙間を埋めるように奏でられる、ギターやベースの旋律の美しさにまず耳を奪われてしまう。クリーンな音色でつま弾くギターのプレイや、縦横無尽に曲をリードするベースのメロディアスなフレーズは、まるで心の中にある風景を映し出した水彩画のよう。そしてそこに乗る、ギターボーカル・山内氏の歌がこれまた素晴らしいのだ。

 

youtu.be

https://youtu.be/k3ak74DqsmE?t=185

 

チャンネル3に収録されている楽曲に、「ポケットは90年代でいっぱい」という1曲がある。これがまた、ビックリするような名曲だ。心の柔らかい部分に沁みていくアルペジオの旋律に乗せて、子どもの頃に歌った合唱曲や童謡のように優しいイノセントなメロディで、

 

叶わない大きな思いがあるってことをやっぱり持っていて

瞼を開けたら もう本当にいないのか

 

と歌い出しから問いかける。そして曲の中盤で、

 

溢れる思いは遠くを眺めていた

いつか叶う

(「ポケットは90年代でいっぱい」より引用 作詞作曲・山内幸次郎)

 

と、一連の問いかけを締めくくるのである。何だか、胸がいっぱいになってしまった。酸いも甘いも経験して渇いてしまった心に、10代の頃とは変わってしまった凝り固まった感性に、「安心していいよ。」「大丈夫だよ。」と優しく声をかけるような歌。こんな風に優しく心に響くのも、正に経験を積み重ねてきたからこそだろう。

 

一切合切、全てのものは変わりゆく。そんな過程で、なくしてしまうものや乾いていくものも多いけれど、きっと素敵なものに出会うことも同じくらい多いのではないだろうか。それだけで、全然悪くない。むしろ、出会えて良かったと思える。Climb The Mindのチャンネル3を聴いて、そんなことを思った。

 

・年を重ねても、音楽に心をゆだねてもいいんじゃない?

 

傷つき転んでも、ひとりで立ち上がり続ける心の美しさを歌う「心のすべて」や、決意する強さを歌いながら、その中にある綺麗に澄んだ心象風景を描き出したようなギターの旋律が光る、「泥棒」などの名曲に続いて、アルバムは比喩的な言葉遊びが見事な「デスマッチ」で幕を閉じる。

 

youtu.be

https://youtu.be/UKC50J6A0YY

 

Climb The Mindのチャンネル3。酸いも甘いも悲しみや喜びをも経験し、たどり着いた心の澄んだ部分にこそ響くアルバムだと思う。もう最高にエモい名盤だ。ここでいうエモ、とは「感情的・衝動的な音楽」という意味のエモではない。「心の奥にある感情を揺さぶる」という意味のエモだ。

 

感性は絶対に変化する。そんな必然ともいうべき流れの中で、「昔みたいに音楽聴かなくなっちゃったなぁ~」というロックファンの方もいることだろう。しかし、そんな方にこそぜひともClimb The Mindをおすすめしたい。デスマッチの連続の如き毎日を戦ってきた、あなただからこそ響く音楽もあるのだ。ロックの衝動にブチ抜かれ、身も心もゆだねてきた10代の頃のように、時には音楽に心をゆだねてもいいんじゃないかな。

 

なんだか最後押し付けのようになってしまった。Climb The Mind、とても素敵なバンドなのでぜひともおすすめです。

 

本日のテーマソング

NIRVANA/Drain You