黴ブログ

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エレファントカシマシ「友達がいるのさ」を聴いて今僕が思うこと

 

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先日、いつものようにウォークマンで音楽を聴いていると、エレファントカシマシの「友達がいるのさ」が流れてきた。うーむやはり名曲。僕はエレファントカシマシの曲の中でも、この「友達がいるのさ」が大好きなのだ。

 

孤独な男の、内面を省みるかのような歌詞の出だしに始まり、サビ部分では一転して、エレファントカシマシ節とも言うべき力強いシャウトで高らかに歌い上げるこの曲。きっとエレファントカシマシを知らない人でも、「いい曲だね」と言うであろう、文句なしの名曲だ。

 

そんな誰もが認める超絶名曲であるこの「友達がいるのさ」だが、耳元で流れるこの曲に身を任せながら、僕はプロ野球選手であるイチロー氏のことを思い出し、遠く彼方へと想いを馳せていた。

 

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「何で唐突にイチロー?」「エレファントカシマシイチロー、あんま関係なくない?」そんな声が聞こえてきそうだ。「こいつ、頭おかしいんじゃないの?」いや待ってくれ、そんな風に言わないでくれ。これにはれっきとした理由があるんだ、どうかブラウザバックしないでくれ。「理由って何だよ?パパッと説明せんかい!」いや、まあ今から説明するからどうか落ち着いて欲しい。

 

という訳で今回は、数年前に僕の身に起きたイチロー氏と「友達がいるのさ」にまつわる、因縁深いとある思い出についてのお話をお送りしようと思う。数年前の僕に何があったのか。「友達がいるのさ」にどんな関わりがあるのか。順を追って語っていこうじゃないか。

 

プロ野球選手のイチロー氏の活躍といえば、今更僕が説明せずとも皆さんも知るところだろう。デビュー以来、数々の試合のおいて記録を塗り替え、先日もシアトル・マリナーズへの復帰が報道されたばかりだ。正に生きる伝説。何を隠そう僕は、そんなイチロー選手の大ファンなのである。

 

野球の経験もなければ特に詳しい訳でもないが、イチロー選手のどこにそこまで心惹かれるのかと言えば、それはやはりその圧倒的なストイックさだ。

 

周囲が「天才!」と騒ぐ声にも惑わされず、冷静に「それだけの努力をしているので、自分のことを天才とは別に思わない」と言ってのけるそのクールな佇まい。過酷な練習にもストイックに打ち込み、徹底的な努力を重ねてそれに見合うだけの結果をしっかりと残す。最高にかっこいい。これぞ男の中の男ってもんだろう。

 

基本的に文科系ボンクラ男子代表の僕だが、意外と熱い体育会系な部分があるのだ。数々の名言や伝説やストイックさに触れている内に、野球にさして興味のない僕も、いつの間にかイチロー選手のファンになっていたのだ。

 

数年前に務めていた会社で、異動を経験した。それも中々に重要なポジションでの異動だ。イチロー選手よろしく、ここは心の底に眠った熱い体育会系マインドを発揮して仕事に打ち込んでいかねばなるめぇ。イチロー選手ばりのストイックさで仕事に打ち込み、「きゃー!かっこいい!抱いて!」とか若いちゃんねーに言われたりしてな。気合はもちろん、仕事の目標も高く設定する。無駄なお喋りなんて俺はしないぜ。求めるのはより高い目標と結果だけさ。ビバ!ストイック!そんな具合にメラメラと仕事に燃えていたのだ。

 

そして、そんなストイック精神はプライベートでも発揮された。当時の僕は「どうすれば彼女が出来るか」という命題を背負っていた。普段はだらしないひとりぐらし故に、たまには女の子との甘いおデートなども楽しみたいではないか。汚れた部屋もクリーンに保ち、髪の毛も美容室でオシャンティーにカット。服もおしゃれなものを購入し、ダイエットにも励んじゃう。極限までデキる男を演出しようと思った。

 

まあこうして挙げるだけでも、イチロー選手とは随分程遠い、ただの勘違いした意識高い系(笑)なクソ野郎なんですけどね。ちょっと黒歴史だからね。こんな奴俺嫌いだわーと自分に対して思いますね。

 

しかし、そんな生活を続けている内に、段々と体調が悪くなってきた。何故だか夜も眠れず、仕事でも普段はやらないような凡ミスを連発する。心なしかげっそりとして顔色も良くない。体温を測れば、高熱じゃないか。何だかモヤモヤとした霧が心を覆っているようで、元気もなくなってきた。

 

今となっては、そりゃそうだって話だ。基本的にずっと無理をしているのだから。きっと自己肯定感が低すぎることの、そしてプレッシャーからの反動だったのだろう。イチロー選手への憧れと理想の自分の姿を重ね合わせて、無理な努力を重ねていたのだ。結果が出ても「こんなんじゃ全然ダメだ!」と、常に自分を追い込みプレッシャーをかけ続ける。ストイックとは名ばかりに、自分で自分を徹底的にいじめていたのだ。

 

「友達がいるのさ」を始めて聴いたのが、ちょうどそんな時期であった。あまりに素晴らしい歌詞に歌にサウンドに、一発で心を持っていかれた。同曲が収録されている「風」というアルバムを、即座に注文したのを覚えている。

 

「とほほ。。」と肩をすぼめて歩く帰り道で。「俺ってほんとバカだなあ」という思いを抱えて揺られる電車の中で。勘違いして自爆した愚か者のクソバカの意識高い系(笑)である僕に、ボーカル・宮本浩次氏は優しく歌いかけるのである。

 

電車の窓にうつる俺の顔 幸せでも不幸でもなかった

くちびるから宇宙 流れてく日々に本当の俺を見つけてえんだ

 

自分のことを歌っているのかと思った。いつものように「頑張ろうぜ!」と激を飛ばす宮本浩次氏の姿は、ここにはない。しょんぼりと肩を落として歩く、ロックスターではないひとりの寂しい男の姿があるだけだ。 そしてサビに差し掛かった辺りで、男は声高に叫ぶのである。

 

俺はまた出かけよう あいつらがいるから

明日もまた出かけよう 友達がいるのさ 俺はまた出かけよう

作詞作曲:宮本浩次エレファントカシマシ「友達がいるのさ」より引用

 

そうだ。当たり前のことだが、体調を崩す程に無理をして、自分を作り替える必要はないのだ。確かに努力は大事だ。ストイックさも必要だし、結果も含めて高みに上っていかなくてはなるまい。しかし、それも自身のレベルで頑張れる範囲でのことだ。体調を崩しては元も子もない。僕がその時出来る「自身のレベル」を大いに超えていたのだ。イチロー選手が伝えたかった努力とは、そんなことではないだろう。

 

大事なのは、自身が今出来ることを精一杯やってものにしていくことだけだ。そんな繰り返しで、始めは無理だったものも次第に出来るようになっていくのだ。そういった意味では、頑張っていないダメな奴などこの世界にいないだろう。

 

そして俺にはそう、あいつらがいるじゃないか。彼女などいなくとも、寂しいひとりぐらしでも、駅までの道中に同僚と交わす「~さん可愛くね?」なんてくだらないやり取りが、タバコの煙を吐き出しながら友人たちと交わす「この間こんなことあってさ~」という何気ない会話が、ささやかだが僕を笑わせ、歩かせ、毎日の確かな活力になるのだ。

 

俺にはあいつらがいる。よく眠って起きたら、また出かけよう。その時には「こんなことがあってさ~」と、笑い話にしてしまおう。あいつらならきっと、笑ってくれるはずさ。

 

埼京線に揺られ名曲の歌詞を頭で繰り返しながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。電車の窓から見上げた夜空には、月が綺麗に輝いていた。

 

風

 

 

本日のテーマソング

特撮/ロコ!思うままに