黴ブログ

好きなものやことを、徒然なるまま書き散らす。

syrup16gと私

僕の中で特別な存在であるバンドのひとつ・syrup16gが遂にサブスク解禁したらしい。どうやら解禁に際して、リスナーからのレビューを募集しているようだ。

 

syrup16g.jp

http://syrup16g.jp/review/

 

「こりゃファンとしては乗っからない訳にはいくめぇ」という訳で今回は、しょーもなくて痛々しい青春の1ページを彩ったsyrup16gと僕の出会いについて語っていきたい。

 

彼らとの出会いは10数年前。受験に失敗し、GTOに出てきそうな荒れた学校に入学した故に、イケてない学生生活を余儀なくされた高校生の頃まで遡る。部屋で毎日ギター弾いては、ロッキングオンジャパンを熟読するよくいる根暗邦ロック糞野郎だった僕の目に飛び込んで来たのが、syrup16gのライブ記事だった。

 

仄暗い赤や青の照明に照らされながら、全身真っ黒の衣装に身を包み死んだ魚のような目でストラトをかきむしる五十嵐隆氏の写真。「神のカルマ」「イエロウ」「パープルムカデ」「負け犬」「天才」といった、何だかよく分からんけどもの悲しさと殺気と狂気が入り混じったような曲名。

 

完璧だった。最高にクールだ。バンド名すらも知らなかったにも関わらず「あ、これ絶対死ぬほどカッコ良い奴だ」と直感で思った。

 

しかしPCも金もなかった高校時代。実際に音源を聴くタイミングも無く、あれやこれやと過ごしている間に、彼らは突如として解散してしまった。いけね、あのバンド解散しちゃったのかとレンタルして聴いたのが「Delayed」と「coup d'Etat」の2枚のアルバム。初めて聴いたsyrup16gは、想像した以上に暗くて重かった。

 

ただ雰囲気が暗いってだけでなく、怨念のような禍々しさを感じ、当時まだ純粋な部分が残っていたかーびー少年は「あ、これは俺が聴くべき音楽じゃないかもしれない」と思ったのである。率直にいえば若干引いてしまったのだ。ほらよくあるだろ、聴く前に直感で「あ!これ多分俺好きだわ!」と思いきや、実際に聴くと「あ、そうでもなかったわ」ってなる奴。「センチメンタル」や「Reborn」辺りは素直に良い曲だな〜と感じたものの、本格的にハマったのはもう少し経ってから。本当に悲しい時は、明るい曲なんかいくら聴いても、全く心に響かないどころか、むしろ酷い気分になるんだということを知ってからだ。

 

本当に悲しい時、人は涙を流したり、友達に愚痴をこぼしたりなんてしない。いや出来ない。ぼんやりと部屋の真ん中でうなだれ、過ぎて行くだけの時間に身を任せるだけのただの物体になり下がる。そんな時にこそ、syrup16gの音楽はじんわりと沁みてくる。女にヒドク振られた時、死にかけて救急車で運ばれた時、プチ不運の連続に耐えきれなくなった時。夏場のグリーンダカラのように、それはそれは優しく沁み渡るのである。ただの物体に静かに暖かい血が流れていく感覚だ。悲しみが限界を超えるたび、ちょっとどうかしてんじゃねーか?という位、彼らの音楽のみを聴き続けた。

 

しかし、ただ心を癒すテーマソングとしてだけ機能していた訳ではない。ギターにおけるカポタストの使い方や、様々なローコードの押さえ方を学んだのもsyrup16gのギターをコピーするようになってから。適正な位置にカポを付ければ、大幅なフレット移動をせずともローコードで簡単にコードを押さえられると知った時なんて、感動のあまりおしっこ漏らすかと思った。いや、実際は漏らして無いけども、それくらい感動したのだ、俺は。

 

また同じような趣味のクレイジーロックジャンキー共とコピーバンドを組んで、色々な曲を演奏したりもした。「生活」は勿論、「Reborn」「センチメンタル」「吐く血」「天才」に、「さくら」「ニセモノ」「イエロウ」や「明日を落としても」とかもやったな。

 

いつの間にかsyrup16gの音楽は、落ち込んだ時にひとりぼっちの部屋で聴く音楽ではなくなっていた。僕らみんなで、死んだ魚のような目をしながら、心なんて一生不安なのだ、と裏返りそうな声で歌い、Do you wanna die?と全力で叫び散らかし演奏したものだ。映画や漫画ほどドラマチックな光景ではなかったものの、あの瞬間の僕らは確かに青春していた。世紀末の如き荒れ果てた高校時代では味わうことのなかった、キラメキのようなナニカが確かにあったのだ。

 

あの頃のように頻繁に仲間と会うこともめっきり減って、何をやってるか定かじゃない奴も幾人かいるけれど、今でもsyrup16gを聴けば、しょーもないことで落ち込んでいたクソダサシャバ僧だった頃の自分と、死んだ魚のような目をしながらも、楽しく演奏した光景が蘇ってくる。

 

心の底から死にたくなるような出来事のは今でも時々あるし、それどころか年々重さは増していくばかりだけれど、それでも僕はあの頃と変わらずに、syrup16gを聴きながら、心なんて一生不安なのだ、と呟いて日々を過ごしていくのだろう。

 

delayedead

delayedead

 

 

本日のテーマソング

syrup16g/生活