黴ブログ

好きなものやことを、徒然なるまま書き散らす。

俺的!聴くたびに泣けるおすすめの曲6選(前編)

ハローエブリバディ。いかがお過ごしだろうか。前回の記事で、「the pillowsのストレンジカメレオンがマジ泣ける」といった内容のブログを更新した。

 

kawabeko1991.hatenablog.com

 

そこで考えたんだが、今回はストレンジカメレオンに続いて、個人的に泣けるおすすめの曲を一方的にご紹介しようと思う。普段音楽を聴いて、あまり涙を流すことのない僕だけれど、それ故に思い入れたっぷりの珠玉の音楽を、ガチンコでご紹介出来るのではないか?と考えたのだ。

 

我々現代人は、常に色々な問題が起こり得る、実に複雑な世界で生きている。いかなる瞬間も元気元気で過ごせれば問題はないのだが、いかんせんそれが中々難しい。時にはいかんともしがたい現実に直面し、涙を流すこともあるだろう。

 

ん?大人だし情けなくて泣けないぜ?分かるよ、その気持ち。日本男児たるもの、大の大人たるもの、泣くなんてまるで負けたみたいに思ってしまうよね。しかし、たまにはひとりで涙を流してもいいんじゃないだろうか。音楽によって心を動かされて流す涙は、きっと素晴らしい、美しいものなのではないだろうか。少なくとも僕は、そう思う。

 

という訳で今回は、様々なシチュエーションごとに、聴くたびに泣けるおすすめの泣きの1曲を「俺的!聴くたびに泣けるおすすめの曲6選」と題して、前編と後編に分けてお送りしようと思います。本当は一気に更新するつもりだったんだが、文章量が多くなり過ぎて読みづらいので、2回に分けて更新します。

 

悲しい時のお供にするもあり、なるほどあの曲ね!と楽しむのもあり。もしかしたらあなたにとって、まだ見ぬぴったりな1曲が見つかるかもしれない。早速いってみましょう。

 

・THE SMASHING PUMPKINS 「Today」

 

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始めの1曲目は、アメリカンオルタナティブロックの雄、THE SMASHING PUMPKINSの名曲「Today」。あまりに美しいメロディと、優しいイントロから徐々に激しさを増していくエモーショナルな展開に、僕が聴くたびに思わず泣いてしまう曲の1つだ。

 

Today is the greatest day 

作詞作曲:ビリー・コーガン THE SMASHING PUMPKINS「Today」より引用

 

といった歌詞からも分かる通り、「今日は人生で一番素晴らしい日だ」と歌う、英語が苦手な僕でも理解できるハッピーで穏やかな雰囲気の歌い出しが何とも印象的である。しかしこの曲、一説によると、ボーカルのビリー・コーガンがセールスやスランプなどの様々な苦悩に悩まされ、自殺を考える程に鬱々としていた時期に書いた曲なのだそう。

 

そんなエピソードを知った上で聴くと、「Today is the greatest day」が、ほのぼのとした雰囲気から一転して、バイきんぐの小峠氏よろしく「なんて日だ!」「なんてクソみてぇな日だよ!」とも言いたげな、悲痛な叫びのように聞こえてくるから不思議だ。改めてよく歌詞を見てみると、優しい曲調に反して内容はかなりヘビィで、隠れたギリギリの精神状態がうかがい知れる。

 

そんなヘビィな状態を歌った曲だからだろうか。泣きっ面に蜂な、プチ不運に連続して襲われて憔悴してしまった時や、なんだかふと「疲れたな。。」なんて思ってしまう晴天の日に、僕はTHE SMASHING PUMPKINSの「Today」を無性に聴きたくなってしまう。疲れ切って憔悴した心に、「なんてクソみてぇな日だよ!」とでもいうように歌うこの曲が、なんだかやけにシンクロしてしまう。「まるで俺のことを歌ってるみたいだ」なんてことを考えてしまうのだ。

 

ふと疲れたなあ、なんて思ってしまう晴れた日に、ぜひともおすすめの曲だ。

 

Siamese Dream

Siamese Dream

 

 

RADIOHEAD 「Creep」

 

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時々思うのだが、本気で恋に落ちた時、「俺、絶対あいつ落とすわ!!」と自信に満ち溢れたテンションでガツガツいける男ってどのくらいいるんでしょうね。そして、それで本当にあの娘を物に出来る確立ってどのくらいだろうなんでしょうね。でもきっとそんな奴はほんの一握りで、大抵の男子は「大丈夫かなぁ、やらかしてねぇかなあ」と不安に思うものだと思う。

 

そんな恋の駆け引きにおいて、胸を襲う不安が限界値を超え、フラグもなにもかも消え去り、「俺はなんてダメな奴なんだろう」と膝を抱える夜にこそ聴きたい曲が、このRADIOHEADの「Creep」だ。

 

You're so fuckin'special

I wish I was special

作詞作曲:トム・ヨーク  RADIOHEAD「Creep」より引用

 

上記にもあるように「君が特別なように、君にとっての僕も特別だったら良かったのになあ。。」と、寂しくつぶやく歌詞や、ギタリストのジョニー・グリーンウッドによる、サビ前からのなかばヤケクソ気味なギターが最高にエモーショナル。「理性じゃなくて感情のままに弾きました!」ともいいたげな、衝動的なプレイや優しい曲調が相まって、シュルシュルと縮んだ心に刺さりまくってしょうがないんである。

 

自身の情けなさやドラマや歌にもならないような恋の痛みで、思わず膝を抱えてしまう夜に聴いたならば、きっとホロホロと泣けてきてしまうだろう。ていうか俺は泣いた。恥かしいけどもう号泣しましたわ。ファルセットで衝動的に歌う、トム・ヨークのボーカルがまた最高なんだよな。

 

RADIOHEADの「Creep」、敗戦確実な恋の途中や終わりに聴きたい、おすすめのラブソングです。

 

Pablo Honey?[国内盤 / 解説・歌詞対訳付] (XLCDJP779)

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LOSTAGE 「いいこと/離別」

 

いいこと/離別

いいこと/離別

  • provided courtesy of iTunes

 

恋愛、仕事、進学、夢。人生は、そういった様々な希望を追いかけることの連続だ。自身の希望を叶えるためには、きっと全ての勝負に打ち勝ち、ひとつひとつ手に入れていく他ないだろう。しかし追いかけるその道中で、なにかを失ったり離れていってしまうものもそりゃある訳で。

 

夢や理想などを追いかけ続ける旅の途中、失ってしまうものや離れていってしまうものを思い、足がすくみ恐れおののき、寂しさや悲しみに襲われた時にこそ聴きたいのが、LOSTAGEの「いいこと/離別」だ。

 

どこかセンチメンタルで疾走感のあるビートに乗せて、降りかかる煩悩やアレコレを全て振り切って駆け抜けていくようなサウンドや歌詞が、とにかく素晴らしい。僕が特に好きなのが、Cメロから後半のサビにかかる部分。

 

すり潰して 多分さ いい事があるぜ

吸い込んで 多分だけど いい事があるぜ

 

とCメロで優しく言い聞かせるように歌いながら、疾走感のあるラスサビに突入し、

 

クソ離れていく クソ別れていく

ビリーバー また夢をみてる

作詞:五味岳久 作曲:LOSTAGE  LOSTAGE 「いいこと/離別」より引用

 

と高らかに宣言するように歌い出すのだが、この部分で何度泣いただろうか。もう今でも聴くたびに涙腺がヤバいです、はい。

 

大切な誰かとの別れや、失ってしまうことや距離が生まれてしまうことって、生きていれば当然直面してしまうことで。度々訪れる様々な離別に、時には悲しみの淵に追いやられることもままある。「どうしようかな」と悩むこともまあ、多い。そんな時LOSTAGEの「いいこと/離別」は、「いいことがあるぜ」「どんなになっても追いかけていこうぜ」と、毎度背中を押してくれるのである。

 

どうあがいても叶いそうにない夢や希望に、知らずと失い離されていく現実に、追いやられてぼろ雑巾のような心地がする夜更けにこそ聴きたい、おすすめの曲である。そうしてさめざめと涙を流しながらも、次の朝には「やってやんぜ!」と気合を入れ直すのである。そうやって今日も戦っていくのだ。俺たちは。

 

Guitar

Guitar

 

 

前編ということで、以上の3曲で本日は終了です。残りの3曲はまた次回、熱く紹介していこうと思います。あなたの好きな1曲も、もしかしたらランクインしているかも知れない。こうご期待!

 

 

本日のテーマソング

korn/Beg For Me

 

the pillows ストレンジカメレオンを聴いたし。マジ超泣いたし。

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普段音楽を聴いて、あまり涙を流すことのない僕だけれども、聴くたびに思わず涙腺をグイグイと刺激されてしまう、という曲がいくつかある。ひとたび耳にすれば、心の柔らかい部分を、親指で強く押されるように目から涙がボトボトと零れ落ち、「あれ、俺、なんでこんな泣いてるんだろう。こんなはずじゃなかったんだけどな。。」なんて思ってしまうのだ。

 

そんな曲のひとつが、the pillowsの名曲・ストレンジカメレオン。非常に有名な曲ゆえに、知っている方も多いことだろう。

 

高校時代、周りのJKたちが、昼の校内放送で流れるJ-popを聴きながら「ゥチこの間ァ、彼氏とケンカしてェ、そん時この曲聴いてェ、マジ超泣いたしィ~」と盛り上がる中、僕は「マジで?ヤバくね?ゥチはthe pillowsのストレンジカメレオン聴いてェ、マジ超泣いたしィ~」と心の中で相槌をよく打ったものだ。懐かしい。

 

10代の頃からストレンジカメレオンを聴くたび、僕はもうパブロフの犬かのように泣いてしまうのだ。つい先日もそうだった。たまたまイヤホンから流れたストレンジカメレオンに、不覚にも涙腺を持っていかれてしまった。

 

我々のような、オルタナティブなひねくれ野郎たちにとって、こんなに優しい歌はそうそうないだろう、と思う。どんな条件下でも、無条件で心に響いてしまうのだ。もう、心が弱っている時に聴いたならば、大変なことになってしまう。

 

 ストレンジカメレオンは、the pillowsの1997年リリースのアルバム「Please Mr.Lostman」に収録されている1曲で、ボーカル・山中さわお氏が当時抱えていた孤独感や疎外感などの苦悩が、色濃く反映されているのがとにかく印象的だ。

 

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我々が生きる現代の生活は、蹴落とし蹴落とされのマウント合戦の連続で、熾烈を極めるものだ。様々な選択肢の中から常に正解を選び取り、勝負に勝ち続けなければサバイブできない。なかなかに残酷なことも起こるのが現実だ。相手に弱みを見せることなど、もっての他だ。

 

しかし、だ。時には、高く立ちはだかるそんな壁に圧倒されて、潰されてしまうこともある。勝負に負けてしまうことも、まあ、ある。

 

その過程で「やってらんねぇぜ!」と投げ出すことも、「俺は何てダメなやつなんだ!」と非力な自分を、ブチ殺したいくらい嫌いになることもあるだろう。そりゃそうだ、て話だ。何故なら俺たちは完璧超人ではない、人間だもの。

 

心にそうした悲しみが、孤独感が、疎外感が顔を出しうなだれるその時、耳元で流れるストレンジカメレオンはやけに胸に突き刺さり、目の前の景色をかっさらっていく。何故だかポロポロと目から雫が次々と零れ落ちてくる。

 

それはきっと、ストレンジカメレオンを聴いているその時、我々もまた、歌詞にあるストレンジなカメレオンになっているからだろう。

 

そんな我々に対して、周りに順応できない自分を「出来損ないのカメレオン」だと、変われない自分は「滅びるしかない」のだと皮肉りながらも、「それでも僕は君のために優しい歌が歌いたい」と、山中さわお氏は歌う。*1

 

そこに「こうしたらいいよ!」という明確な答えもなければ、押し付けもない。あるのはただ、スランプやセールスなどの様々な葛藤を抱えながら、自身をストレンジカメレオンだと皮肉ってみせる、さわお氏の優しい歌だけだ。

 

それは、まるで長年の付き合いのある気の置けない友人が、優しさとけだるげな安心感を持って、耳元でそっと寄り添ってくれているかのような心地だ。心が悲鳴をあげた時、「こうしたらいいんじゃない?」とあれこれ指図することもなく、ただ寄り添っていてくれること程、嬉しくて泣きそうになることはない。

 

いつか僕が、寂しきストレンジカメレオンと化した時は、きっとこの曲を聴くことだろう。そしてまた高校時代のように、心の中でそっと、「マジ超泣いたし」とポツリつぶやくのだ。

 

Please Mr.Lostman

Please Mr.Lostman

 

 

本日のテーマソング

supercell/星が瞬くこんな夜に

 

 

 

 

 

*1:アンダーラインの歌詞部分は、「ストレンジカメレオン」(作詞作曲・山中さわお)より引用

ガールズロックバンドFINLANDSが今、最高にかっこいい

かつてロックの衝撃にやられた全ての者たちには、皆等しく、ひとつの運命が待ち受けているように常々思う。一度ロックのリズムに、メロディに心を奪われたら最後。次の新たな衝撃に出会うための、砂漠の如く広い、音楽の世界をさまよう旅が始まるのだ。

 

その旅が、もう滅茶苦茶楽しい。好きなバンドのルーツを探ったりなどは、音楽ファンにとってあるあるな楽しみ方だろう。ルーツを探りながら、まだ見ぬ素敵な音楽に出会えた時などは、もう無上の喜びのひとつだ。

 

しかしそんな楽しい旅の途中、ふと「最近のバンドはさぁ~…」と愚痴をこぼしたりしてしまうことってないだろうか。

 

年齢を重ねるごとに、我々の感性も変化していく。かつてはCDショップなどで発掘しては、延々と聴いていた若いロックバンドの曲などが、何故だか楽しめなくなってしまう、ということが往々にしてある。そんな時にふと、上にあるように「最近のバンドはさぁ~…」と感じてしまうこと、ありませんか?

 

しかし若いロックバンドでも、本当にかっこいいバンドは沢山あるんじゃなかろうか。「ロックバンドの元気がない」などといわれがちな昨今でも、かっこいいロックバンドは生まれて、今日もどこかでライブを繰り広げているのではないだろうか。そんな風に考えていたところ、とあるバンドに出会った。

 

そのバンドがFINLANDS。僕は今、FINLANDSが最高にかっこいいと思います。「何だか退屈だなぁ」と感じているあなたに、ぜひともおすすめしたいバンドだ。

 

paper

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・ソリッドさとクールさが病みつきになるガールズロックバンド

 

FINLANDSは、ボーカルとギターの塩入冬湖氏とベースのコシミズカヨ氏の2人からなる、2人組ガールズロックバンド。

 

ライブやアー写における、厚手のモッズコートを着用したメンバーのビジュアルもさることながら、その楽曲たちもどことなく冬の寒さを連想させるものばかり。FINLANDS(読み方は、フィンランズ)の名の通り、凍りつく冬のフィンランドのように尖りながらもクールな世界観がもうめちゃんこ魅力的なのだ。

 

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こちらの「ウィークエンド」を聴いてみて欲しい。とにかくキラーチューン感満載の名曲だ。歯切れの良いシングルコイルのギターから繰り出される、縦横無尽に曲中を駆け巡るリズミカルなリードギター。そして、マイナーコードを中心にした、切なさや虚無感や寂しさなどの、センチメンタルな心象風景を連想させる、疾走感のある曲。

 

奇をてらったアイディアや、ガールズバンド特有の女子女子した雰囲気にも頼らずに、感情のままに歌い掻き鳴らす正統派ど真ん中なギターロックに、センチメンタルさを通り越して、ゴリゴリにゲインを上げた心のオーバードライブが一気にONになってしまう。FINLANDSのようなバンドって、これまでいたようでいなかった気がする。これ、もう滅茶苦茶かっこよくないですか。

 

・冷たさと熱さが同居した塩入冬湖のボーカル

 

楽曲の良さもさることながら、最大の魅力は何といっても、塩入冬湖氏の特徴的なボーカルじゃないかと思う。まるで歌手のchara氏やYUKI氏が感情を最大にブーストさせたような、喉元をキュッと締めて歌う高音部分が印象的だ。

 

楽曲にもある、一抹のセンチメンタルさや切なさといった冷たさを持ちながらも、心の奥底から湧き上がる熱い衝動をも感じさせるボーカルに、心を惹きつけられてしまう。そりゃ、こちらの感情のオーバードライブも、ガッと入ってしまうってもんだ。

 

youtu.be

 

また、そうした圧倒的な声で歌われる、どこか詩的で時折ハッとさせられるようなパンチの効いた歌詞も素晴らしい。

 

クレーター クレーター お前の跡なら何千万もついてやろう

クレーター クレーター 跡形消すまで破撃光線じゃ意味がない

(FINLANDS「クレーター」より歌詞引用 作詞作曲:塩入冬湖)

 

男女の恋愛における関係の歪さを歌った歌詞だと思うんだが、そこに付随するアレコレを、「クレーター」のワードで表すこの表現力よ。

 

抽象的な歌詞の中でも光る、こうした言葉遊びの巧みさが、さらっと聴いていても耳に飛び込んでこびりついてしまう。そしてラスサビの衝動的なシャウトである。ハッと胸を打つこうしたフレーズや、曲の持つ、かっこ良くなる絶妙なポイントを的確に突いたボーカリゼーションに、聴けばたちまち引き込まれてしまう。一度聴いたら忘れられないこうした中毒性の高さも、FINLANDSの魅力のひとつだろう。

 

・いつかの「かっこいい!」にまた出会えるバンド、FINLANDS

 

「最近のバンドはさぁ~…」などと時折口にしながらも、僕らが音楽を巡る旅が止められないのはきっと、かつてロックに魅せられたあの衝撃がずっと忘れられないから。そう、僕ら音楽ファンは、そんなあの時の「かっこいい!」に何度でも出会いたいのだ。そんな「かっこいい!」にまた出会いたいから、旅を続けているんじゃないか。いわば長い旅路を歩く、永遠のビューティフルドリーマーなのだ、俺たちは。

 

そんな俺たちが捜し歩く「かっこいい!」が、FINLANDSの音楽にはある。そんな風に思う今日この頃。未聴の方、聴いてみて下さい。きっとあなたの心のオーバードライブも、ゲインマックスでONになることでしょう。おすすめです。

 

本日のテーマソング

エレファントカシマシ/幸せよ、この指にとまれ

 

 

 

 

The Birthdayの元ギタリスト・イマイアキノブは本当に下手なのか?

The Birthdayの音楽が好きだ。最近の活動こそあまり追えていないけれど、イマイアキノブ氏がギタリストとして在籍していた頃などは、よく聴いたものだ。低めに構えたフェンダージャガーから繰り出される、ローファイかつブルージーな、大人の色気の漂うギターサウンドに夢中になって聴いていた。

 

しかし、イマイ氏が脱退し、フジイケンジ氏が加入した辺りで知ったのだが、どうやらイマイアキノブ氏のギターには批判も多かった模様。ネットで見てみると、「下手」だの「フレーズがクソ」だの「全然ダメ」だのと、散々ないわれようじゃないか。

 

もうね、ビックリしてしまった。「何でや、かっこいいじゃんかよ!」と遺憾の念を覚えた。自慢じゃないが、憧れてフェンダージャガー購入したんだからな、俺。大学時代などは、そのかっこよさにしびれて、コピーバンドを結成してブイブイいわせてたんだからな。

 

何かと批判も多かったイマイアキノブ氏だが、そんな意見に対して、NO!を突きつけたい。という訳で、今回はいちファンの視点で、イマイアキノブ氏のギタープレイの素晴らしさついて語っていこうと思う。

 

NIGHT ON FOOL

NIGHT ON FOOL

 

 

・しっとりと楽曲に寄り添ったギタープレイ

 

イマイアキノブ氏のギターの特徴といえばまず、しっとりと、そしてしっかりと楽曲に寄り添ったプレイが挙げられるだろう。

 

The Birthdayでは、ミッシェル・ガン・エレファント時代とは打って変わって、ボーカルのチバ氏が、リフやコード進行をガシガシと弾いて曲をリードしている。その中で、曲の隙間を縫うようにフェンダージャガーの枯れたトーンで放たれる、フレーズやアルペジオ、リフがもう滅茶苦茶かっこいいのだ。

 

アルバム「NIGHT ON FOOL」収録の「グロリア」では、基本的には淡々とバックで演奏を支えながら、合間では揺らぎのあるペンタトニックのリフを、間奏では突如として感情を爆発させたかのような、エモーショナルなフレーズをブチ込んでくる。アルバム「STAR BLOWS」収録の名曲「ピアノ」では、イマイアキノブ氏の弾くリバーブのかかった、まるで降り積もる雪のようなリフレインが、心のセンチメントな部分にそっと沁み込んでいくような心地がする。

 

またフレーズやリフばかりではなく、ギターソロも非常に魅力的なものばかりだ。特に「涙がこぼれそう」のソロが僕は好き。思わず走り出したかのように入るチョーキングはもちろん、尖りきった感情を表現したように挟まれる、後半のダブルチョーキングにスライド。正に涙がこぼれそうな、最高の泣きのソロだと思う。

 

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こうしたイマイ氏のギターは、どれも音数が少なく、コピーしようと思えばパッと弾けてしまうプレイばかりではある。しかし、どれも楽曲の世界観を構築している、大事な音ばかりだ。あのフレーズなくしてこの曲はないともいうべきだろう。仮にこれが全く違うフレーズだとしたら、きっと曲の印象はガラリと違ってしまう。

 

イマイアキノブは本当に下手なのか

 

批判を受けるのは、もしかしたらその音数の少なさからかもしれない、と思う。確かに、弾けたら一目置かれるような、テクニカルなタイプのギタリストではないだろう。フレーズをコピーすること自体は簡単だ。しかし、音自体をコピーしたとしても、あのニュアンスまでを出せる人はどれ位いるのだろうか。

 

フレーズだけではなく、ジャガー特有の独特なピッキングニュアンスやタイミング、音のトーンや上がり具合といった細かいプレイのひとつひとつで、胸に浮かんでは消える様々な感情の揺らぎを表現する、素晴らしいギタリストだと思う。本当に下手な人が、少ない音数で細やかな感情の機微をギターで表現しようとしても、到底不可能だろう。

 

ギターを弾く上で一番難しいのが、この細かいニュアンスを出す、という部分だ。ちなみに僕は無理。フレーズ自体は弾けても、少ない音数で細かい感情の機微を表現したような、あのドラマチックなフィーリングは中々出せない。

 

The Birthdayでは、チバ氏がガンガンギターを弾いているし、イマイ氏自身、ギターを弾きまくって曲をリードしていくようなタイプのギタリストではない。ミッシェル・ガン・エレファントアベフトシ氏と比べたら、真逆のタイプともいえるだろう。

 

しかし、大人の色気香る、ブルージーなロックンロールを鳴らすThe Birthdayでは、時にバックに徹したり時に前に出て弾き倒したりと、チバ氏とのギターの掛け合いも魅力のひとつだ。しっとりと楽曲に寄り添った、The Birthdayでのイマイ氏のプレイを久々に聴きながら、そう懐かしく思った。

 

本日のテーマソング

ROSSO/ブランコ

映画「エターナル・サンシャイン」を観た ラストシーンに見る、大事な愛の形

先日、1本の映画を観た。タイトルはエターナル・サンシャイン。有名な映画ゆえ、知っている人も多いだろう。失われていく記憶の中での、恋人との逃避行を描いたラブストーリーだ。これがもうめちゃくちゃ面白い。もしも「おすすめの映画は?」と聞かれたら、間髪入れずにおすすめしたい1本である。観るのは2回目なのだけれど、マヂ泣ける。普段はクールでスタイリッシュなメンズを目指している僕だけれど、柄にもなく「愛ってこういうことなんだろうな。」などと思った。

 

愛っていったいなんだろうか。人々を惑わせ時に救ったりもする、未だ謎に包まれた部分も多い、愛。これってなかなかの難題だ。僕は一言でパッと説明できない。しかしそれを解き明かすヒントなら、このエターナル・サンシャインにあるんじゃなかろうか、と思うのである。

 

そこで今回はテンションの赴くまま、マイフェイバリッド・ムービーのひとつである、エターナル・サンシャインについて語っていきたい。ちなみにネタバレも含む予定。ご注意あれ。

 

・あらすじ

 

youtu.be

https://youtu.be/h4QXNYSAL_Y

 

エターナル・サンシャインは、2004年公開のSFラブストーリーだ。まずはざっくりと、ストーリーを説明しようと思う。

 

ジム・キャリー演じる主人公のジョエルは、ケイト・ウィンスレット演じる恋人のクレメンタインと喧嘩別れしてしまうのだが、そこでクレメンタインが自身と関わった記憶を消去してしまったことを知るのである。そして自分のことなど忘れて、他の男と交際を始めたクレメンタイン。「俺だってお前との記憶なんざ消してやるわ!」と、ブチ切れたジョエルもまた記憶を消すために、嫌な記憶の消去を請け負う会社、ラクーナ社へと向かうのだ。

 

記憶を消すための施術中、眠ったジョエルの頭の中では、楽しかったクレメンタインとの思い出が繰り返されていた。嫌な思い出は勿論、楽しかった思い出も次々と消えていく。退屈だった日常が、彼女のお陰で輝いていたこと。分かち合ったあの日や、初めて出会った時のこと。

 

喧嘩ばかりで忘れていた素敵な思い出を追体験するうち、「やっぱり君との思い出がなくなるなんて嫌だ!」と思い立ったジョエルは、次々と消えていく思い出を守ろうと、意識の中のクレメンタインを連れて、逃避行を図るのである。

 

・記憶の中の逃避行に愛を見た!

 

ストーリーの伏線や脚本はもちろん、眠っているジョエルのぼんやりとした頭の中を忠実に映像化した描写など、素晴らしい点ばかりなのだが、まず何より頭の中で次々と消えていくクレメンタインを守って記憶の中を右往左往する、主人公ジョエルのエモーショナルさに心が震えてしまった。

 

最後は喧嘩別れしたクレメンタインだけれど、記憶の中の彼女はいつだって笑ってジョエルを励まし、時に頼りないジョエルの手を引き、懸命に逃げようとするのである。それはつまり、ジョエルにとってのクレメンタイン像に他ならない。喧嘩別れしただけに、彼女の印象は最悪のままで終わってしまったけれど、忘れかけていた彼女との思い出を追体験するうちに、皮肉にも「ああ俺、こんなに幸せだったんだなぁ。あいつのこと、嫌いになれねぇや」と彼女の素晴らしさを噛みしめることになるのだ。

 

僕自身、男性だからこそよく分かる。我々男にはそういうところがある。恋愛において、よく「女性は上書き保存。男性はフォルダ保存。」と揶揄されることがあるけれど、僕自身自分を顧みても、そして映画を観ても本当にその通りだと思う。多くの女性は、きっとそんな我々を「男ってほんと、バカ。」と言うだろう。

 

確かにそうだね。俺もたまにそう思うよ。しかし、何も悪いことばかりではないんじゃなかろうか。そうやって悔し涙を流し、時に憎み、迫りくる空虚感に力なくタハハと笑った後、「どこまでも相手を思いやり、受け入れよう。」という決意が、心に微かな暖かい火を灯すのである。そしてそんな気持ちこそが、また誰かと心を通わせていく瞬間に繋がっていくのだ。

 

・大事なのは「思いやり、受け入れること。」

 

映画のラストシーン、必死の逃亡も虚しく、ジョエルの記憶からはクレメンタインは綺麗さっぱりと消えてしまう。そんな中、急な衝動に駆られモントーク行きの列車に飛び乗ったジョエル。ジョエルはそこで記憶をなくしたクレメンタインと再会を果たすのだ。

 

何を隠そうこの2人、記憶がないにも関わらずかつて初めて会った思い出の地である、モントークで再開を果たすのである。そしてかつてと同じように愛を深める2人。運命の人は、どうあがいてもいつか出会ってしまう、ということだろう。そしてかつては喧嘩別れしてしまった2人の心の中には、新たに「喧嘩してもいつか別れる日が来てもいい。ただ相手を思いやり受け入れていこう。」という思いが芽生えるのだ。

 

愛っていったい何だろう。相手を好きだと思う気持ち。またはずっと一緒にいたいという気持ち。無償の奉仕の気持ち。きっとどれも正解だし、間違いなんてないだろう。でも実は、これらの根底にある「相手を思いやり、受け入れよう。」とする気持ちこそが、最も大事なのではないだろうか。それがなかなか難しいのだけれどもね。

 

誰かの記憶を消しちまいたいと願う瞬間は、度々訪れる。「後ろを振り向かず、前を向け!」なんて言われることも多いけれど、時々は後ろを振り返ってみるのも悪くない。なんだかそんなことを思い、心が震える1本であった。おすすめです。

 

エターナルサンシャイン DTSスペシャル・エディション [DVD]

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本日のテーマソング

ASIAN KUNG-FU GENERATION/海岸通り

 

 

 

 

僕の好きなパンクロック

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THE BLUE HEARTSの「パンク・ロック」という曲の中に、こんな歌詞がある。

 

僕 パンク・ロックが好きだ

ああ やさしいから好きなんだ

パンク・ロック」より引用 作詞作曲・甲本ヒロト 

 

「パンクが優しい?そんなことはないだろ。」と初めて聴いた時は思っていた。しかし、今なら言える。パンクロックは、優しい。 そしてそんな優しい歌が僕は好きだ。パンクロックの元祖、RAMONESを聴いていて、そんなことを思った。

 

Rocket to Russia

Rocket to Russia

 

 

先日、「久々に初期パンクでも聴こうかな。」と、ふと思い立ち手に取ったのは、RAMONESであった。70年代のアメリカにおいてパンクロックを演奏し、遠く離れたイギリスにまで飛び火したその熱で、パンクロックのムーブメントを作り出した偉大なロックバンドである。

 

「1・2・3・4!」のカウントで飛び出す、衝動のみでかき鳴らしたようなスリーコードのロックンロールは、どれもシンプルながらも熱い。それでいてどの曲も最高にポップ。おまけにラブソングなんかもあったりして、今聴いてもかっこいい。ノリノリで聴いているうちに、こうしたパンクにのめり込み、夢中になって聴いていた高校時代を思い出してしまった。

 

何度かこの日記にて告白しているように、高校時代の僕といえば暗くてイケてない、ボンクラ学生の代表のような奴だったんだよ。田舎の高校であった為、周りはゴリゴリのヤンキーばかりで、常に授業崩壊一歩手前。強ければ生き、弱ければ死ぬ。そんな北斗の拳の世紀末ばりの荒れた環境で、心から「やってらんねぇわ」と思った。そんな環境からとっとと抜け出すべく、猛勉強を開始した。太宰治夏目漱石などの日本文学にハマったりエレキギターを弾き始めたのも、ちょうどその頃だったな。「俺も何かやらかしてぇ。」と、心の中では熱いパッションに満ち満ちていたっけ。

 

恥ずかしながらまたひとつ告白すると、皆さんにもいたでしょう、好きな異性が。そんなボンクラ学生の僕にも好きな女の子というものがいた。アオハルっすね。書きながらすげぇ懐かしい。そして恥ずかしい。

 

いつも皆とニコニコと笑っているような優しい明るい子であった。しかし、皆とワイワイしていながらも、時々どこか所在なさげな表情をしてることがあった。「うーん、困ったなあ。」とも言いたそうなその表情に、ボンクラな俺は撃ち抜かれてしまったのだ。「最高にクールだぜ。」と思った。

 

皆とワイワイしながらも、あの娘も実は「やってらんねぇわ」と思っているのではないだろうか。もしかしたら話が合うのではないだろうか。「ロックとか、私も実は好きなんだよね」なんて言ってくれたりしてな。だったらいいなぁ。そんなん素敵やん。ボンクラ特有の、半ば勝手な思い込みでそんな風に考えていたっけ。完全にバカ。当時に戻ったら真っ先に説教したい。そんな訳ねぇだろ!と今なら思うけれど、当時のボンクラ野郎の僕にそんな考えはない。完全にどうかしていたと思う。

 

そんな時期によく聴いていたのがパンクロック。GREEN DAYRANCIDSEX PISTOLSRAMONESなどの音楽に夢中になった。特に好きだったのがRAMONES。音は古いけれど、衝動だけでかき鳴らしたようなパワーコードにダウンストローク一辺倒な演奏。ポップで時折哀愁のあるメロディ。長めのマッシュルームヘアーにライダースにGパン。全てがストライクであった。

 

そして何より、「お前もやらかしてやろうぜ。」と言われている気がした。スピーカーの向こうで「退屈なんだろ?面白いことやってやろうぜ。」「見せつけてやろうぜ、あいつらによ。」そんな風に歌っているように聴こえた。このままでは貴重な学生生活に思い出もクソもない。RAMONESはそのパンクロックで世界を塗り替え、ムーブメントを作り出した。そしてデビュー以来、衝動に満ちたパンクロックを鳴らし続けて伝説を残したのだ。俺もやるしかねぇ。あの娘にこの想いを伝えねば、と決意した。

 

まあ、結果は結局フラれたんだけどね。何なら在学中、4回くらいしか会話してないからね。全然ダメダメだったんだけどね。何だったんだろうあれは、と思うけどね。しかし後悔は今でもない。男には、例え無理に思えてもやらねばならない瞬間があるもの。いち男性として、ひとつ上の男になれるかどうか。その運命の分かれ道のひとつがあの場面だったと今でも思っている。

 

何も報われなかったけれど、むしろしょっぱい思い出だけれど、決断して立ち向かったその強さは決して無駄ではない。やるかやらないか。戦うか戦わないか。そんな選択において、パンクロックはいつだって「やらかしてやろうぜ。」と僕に向けて歌う。久しぶりに聴いたRAMONESは、当時と変わらず「やらかしてやろうぜ。」と背中を押してくれる心地がした。

 

やっぱり、パンクロックは優しい。そんな優しいパンクロックが、僕は好き。

 

 

本日のテーマソング

RAMONES/HERE TODAY,GONE TOMORROW

 

 

 

 

Climb The Mind 「チャンネル3」を聴いた 毎日はデスマッチの連続だからこそ響く歌を

ここ最近は、Climb The Mindのチャンネル3というアルバムを繰り返し聴いている。LOSTAGEの五味岳久氏が、ブログで紹介していたことがきっかけで聴いた1枚なのだが、一聴してぶっ飛んでしまった。あまりの素晴らしさに、早くも「2018年俺的よく聴いた音楽」にノミネートしそうな勢いだ。

 

シトシトと濡らす雨粒のように、心の隙間にそっと入り込むギターのアルペジオや、その間を縫ってメロディを奏でるベース。どっしりと演奏の基盤を支えるドラム。そしてそこに乗る、淡々としながらもやけに美しく響く歌のメロディ。

 

20代も中盤を過ぎ、時折ガサガサと音をたてひび割れていく心を濡らすように、スッと沁みていく心地がした。

 

チャンネル3

チャンネル3

 

 

・悲しきかな、変わりゆく若き感性

 

年齢を重ねるたびに肉体は勿論、感性も変わっていく。そりゃそうだって話だ。繰り返す毎日の中で、経験は日に日に増えていく。そうやって得た経験や知識は、自身の哲学や思想にも影響を及ぼし見識が広がる一方、見聞きするもの全てに感動していたやわらかでフニフニだった感性も次第に変化していく。

 

何が言いたいかというと、皆さんにも思うところがあるだろう。10代の頃貪るように読んだような、少年漫画や若者に人気の新鋭ロックバンドの音楽なんかが、楽しんで聴けなくなっていくのだ。僕なんぞはひっそりとチェックしては「顔で注目されてるだけじゃないの。全然ドキドキしねぇわ。」とか心の中で悪態をついてばかりだもの。加齢って悲しいね。完全に「最近の若いもんは~」と飲み屋でクダをまくジジイと同化しているからね。そういうのよくないね。どうしてこうなった。

 

しかしだ。何も悪いことばかりではないな、とも思う。見識が広がり感性が変化していくことによって、Climb The Mindのようなバンドに出会って感動できるのだから。きっと10代ではまた違って聴こえたと思う。それが今、こんなに感動できるのだ。感性の変化も、悪いことではない。むしろ最高じゃないか。

 

・渇いた心にこそ、美しい音楽を

 

Climb The Mindは1999年名古屋にて結成されたエモ/ポストロックバンド。3ピースの、ローファイな音の隙間を活かしたような演奏が魅力的だ。音数が少ない分、真っ白な隙間を埋めるように奏でられる、ギターやベースの旋律の美しさにまず耳を奪われてしまう。クリーンな音色でつま弾くギターのプレイや、縦横無尽に曲をリードするベースのメロディアスなフレーズは、まるで心の中にある風景を映し出した水彩画のよう。そしてそこに乗る、ギターボーカル・山内氏の歌がこれまた素晴らしいのだ。

 

youtu.be

https://youtu.be/k3ak74DqsmE?t=185

 

チャンネル3に収録されている楽曲に、「ポケットは90年代でいっぱい」という1曲がある。これがまた、ビックリするような名曲だ。心の柔らかい部分に沁みていくアルペジオの旋律に乗せて、子どもの頃に歌った合唱曲や童謡のように優しいイノセントなメロディで、

 

叶わない大きな思いがあるってことをやっぱり持っていて

瞼を開けたら もう本当にいないのか

 

と歌い出しから問いかける。そして曲の中盤で、

 

溢れる思いは遠くを眺めていた

いつか叶う

(「ポケットは90年代でいっぱい」より引用 作詞作曲・山内幸次郎)

 

と、一連の問いかけを締めくくるのである。何だか、胸がいっぱいになってしまった。酸いも甘いも経験して渇いてしまった心に、10代の頃とは変わってしまった凝り固まった感性に、「安心していいよ。」「大丈夫だよ。」と優しく声をかけるような歌。こんな風に優しく心に響くのも、正に経験を積み重ねてきたからこそだろう。

 

一切合切、全てのものは変わりゆく。そんな過程で、なくしてしまうものや乾いていくものも多いけれど、きっと素敵なものに出会うことも同じくらい多いのではないだろうか。それだけで、全然悪くない。むしろ、出会えて良かったと思える。Climb The Mindのチャンネル3を聴いて、そんなことを思った。

 

・年を重ねても、音楽に心をゆだねてもいいんじゃない?

 

傷つき転んでも、ひとりで立ち上がり続ける心の美しさを歌う「心のすべて」や、決意する強さを歌いながら、その中にある綺麗に澄んだ心象風景を描き出したようなギターの旋律が光る、「泥棒」などの名曲に続いて、アルバムは比喩的な言葉遊びが見事な「デスマッチ」で幕を閉じる。

 

youtu.be

https://youtu.be/UKC50J6A0YY

 

Climb The Mindのチャンネル3。酸いも甘いも悲しみや喜びをも経験し、たどり着いた心の澄んだ部分にこそ響くアルバムだと思う。もう最高にエモい名盤だ。ここでいうエモ、とは「感情的・衝動的な音楽」という意味のエモではない。「心の奥にある感情を揺さぶる」という意味のエモだ。

 

感性は絶対に変化する。そんな必然ともいうべき流れの中で、「昔みたいに音楽聴かなくなっちゃったなぁ~」というロックファンの方もいることだろう。しかし、そんな方にこそぜひともClimb The Mindをおすすめしたい。デスマッチの連続の如き毎日を戦ってきた、あなただからこそ響く音楽もあるのだ。ロックの衝動にブチ抜かれ、身も心もゆだねてきた10代の頃のように、時には音楽に心をゆだねてもいいんじゃないかな。

 

なんだか最後押し付けのようになってしまった。Climb The Mind、とても素敵なバンドなのでぜひともおすすめです。

 

本日のテーマソング

NIRVANA/Drain You